もう、読みながら、ゲラゲラ笑い転げましたよ。
哲学者のニーチェが、これでもか、これでもか、と言わんばかりにキリスト教を攻撃!
というか、メッタ斬りしたのが本書です。
日本のキリスト教徒は、人口の1%程度だそうですが、信者の皆さんはこれを読んだら怒り狂うでしょう。
多分、最後まで読み通せないと思います。
激怒のあまりに、、、
さて、この新書はドイツの哲学者ニーチェ(1844~1900年)の著書『アンチクリスト』を哲学者の適菜収(てきなおさむ)さんが日本語訳したものです。
ハッキリ言います。
最高です!
超おススメです!
では、ニーチェの肉声の一部分を下に引用します。
「キリスト教は呪いです。キリスト教は退廃です。有害で、陰険で、地下的な、巨大な復讐の本能です。キリスト教は消え去ることのない人類最大の汚点です」
どうですか?
このニーチェのキリスト教に対する批判というか、罵倒は。
もちろん、実際には翻訳者の日本語ですが。
上の引用部は、本書のまとめに相当する「おわりに」からの抜粋です。
なぜニーチェはここまでキリスト教を攻撃するのでしょうか?
本書を最初から読むと、その意図がわかります。
では、何点かポイントを見ていきましょう。
1 イエスその人は評価している。
ニーチェが厳しく批判しているのは「キリスト教」であって、イエス自身の思想や行動は批判していません。
ニーチェに言わせると、イエスは無政府主義者であり、自由な精神を持った人物です。
イエスはユダヤ教の教え(=「罪」「罪の許し」「信仰」「信仰による救い」など)をすべて否定した、とニーチェは述べています。
ニーチェは「イエスとキリスト教は無関係」だと言いたいのです。
*以下の2~5の記述で特に断っていないところは、すべてニーチェの意見・主張です。
2 キリスト教はパウロ教である。
現在のキリスト教はパウロが作りだしたもので、イエスの教えとは正反対です。
パウロが作成したキリスト教にはイエスの大切な教えは何一つ入っていないのです。
パウロはキリスト教の歴史をデタラメに改ざんし、イスラエルの歴史さえも自分たちの都合で書き換えました。
パウロや他の弟子が使った「報復」「罰」「審判」などの言葉は、イエスの教えに背いています。
イエスは「神の国」は現実の世界に存在すると考えましたが、パウロたちは「約束されるもの」「終末にやってくるもの」に変更しました。
*パウロ(前10年頃~65年頃)って何者?
⇒『新約聖書』の著者の一人で、ユダヤ人。本人はイエスの『使徒』を自称しているが、有名な『十二使徒』には数えられていない。当初はイエスの信徒を迫害していたが、ミイラ取りがミイラに。『イエスの犠牲と復活』という神学をでっちあげ、キリスト教の理論家となった。
3 ニーチェが指摘するキリスト教(=パウロ教)の問題点
?「神」「霊魂」「自我」「精神」などといった、ありもしないものに存在するかのような言葉をあたえたこと
?「罪」「救い」「神の恵み」「罰」「罪の許し」などの空想的な物語をつくったこと
?「神」「精霊」「霊魂」など、存在しないものをでっちあげたこと
?キリスト教の世界観は人間中心で、自然をまったく理解していないこと(=自然科学をゆがめたこと)
?芝居の世界の話(「悔い改め」「良心の呵責」「悪魔の誘惑」「最後の審判」など)を現実の世界に持ち込んで心理学をゆがめたこと
以上のような問題点を挙げてますので、詳しくはぜひ本書をお読みください。
4 仏教を高く評価している。
仏教は、「問題は何か」と客観的に考える伝統を持っているので素晴らしいと思います。
仏教は、歴史的に見て、論理的にものごとを考える唯一の宗教です。
仏教は上流階級や知識階級から生まれた宗教だから、キリスト教とは大きく異なります。
キリスト教は敗者や抑圧された者の不満がその土台となっています。
つまり、キリスト教は最下層民の宗教なのです。
5 ニーチェは、哲学者のカント(1724~1804年)や宗教改革で有名なルター(1483~1546年)も厳しく批判している。
カントは実際には存在しない「真の世界」や「世界の本質としての道徳」という意味不明の考えをでっちあげたために、キリスト教(=パウロ教)の神学者と同じ働きをすることとなりました。
ルターが教会を批判したために、教会が復活してしまいました。
そのせいでルネサンス(=半キリスト教運動)が徒労に終わってしまいました。
そして、ルターのせいでキリスト教の中でも最悪の種類であるプロテスタンティズムが生まれてしまったのです。
*以上の1~5は本書の内容から、「なるほど」と思った部分を挙げてみました。
とにかく、全編がキリスト教に対する批判・攻撃で成り立っています。
再度、書きますが、ニーチェはイエスその人は高く評価しています。
ニーチェが我慢ならないのは、イエスの教えを歪めてしまった「キリスト教=パウロ教」なのです。
訳者の適菜収氏が、まるでニーチェが話しているかのような読みやすい日本語にしています。
キリスト教に対して、「よくわからんけど、なんか怪しくないか?」と感じている人には、おススメの一冊です。
一読して、「目から鱗が落ちる」状態、間違いなしですよ!