前回、1789年7月14日のバスティーユ牢獄襲撃・占領の件について紹介した。
今回は、まず、この血塗られた暴動の背景から触れていきたい。
まず、教科書的な背景説明は以下のようなもの。
「国民議会は憲法の起草を始めたが、まもなく国王と保守的な貴族は、武力で議会を弾圧しようとした。この頃、パンの値上がりに苦しんでいたパリの民衆は、これに反発して圧制の象徴とされたパリのバスティーユ牢獄を7月14日に攻撃した」
ここから、少し、追加情報を挙げたい。
*事実、国王と宮廷の保守的な貴族は、一万八千の軍隊を使って、武力で国民議会を解散させる計画を進めていた。
それを察知したパリの民衆は、武器を奪うためにバスティーユ牢獄を襲撃・占領する。
牢獄の守備隊の司令官は、群衆からもみくちゃにされる中で殺害され、首をはねられた。
暴徒は、司令官の生首を槍の先につけて、誇らしげに市中を練り歩いた ~ なんとも野蛮というか、残虐というか、、、
*バスティーユ牢獄は、「圧制の象徴」とよく説明されるし、不勉強な左翼やリベラルは「バスティーユ牢獄は専制の象徴。その牢獄を襲撃するのは、解放のための闘争にふさわしい」などと得意げに発言する。
ところが、この襲撃時に、バスティーユ牢獄にはいわゆる「政治犯」は一人もいなかった。
収容されていた囚人は、四名の手形偽造者、精神異常者が二名、そして家族の要請によって監禁されていた貴族が一名の計七名であった。
無知な日本の左翼は、パリの民衆が政治犯を解放したと無邪気に信じ込んでいるようだ。
ホント、おめでたい連中だ。
*バスティーユ襲撃の数年前から、フランス社会は混乱・疲弊していた。
特に、1786年に、「英仏通商条約」を締結したことにより、フランス経済は大打撃を受けた。
相手のイギリスは産業革命を展開中で、安価な工業製品を大量生産することに成功。
従って、二国間の貿易自由化は、「イギリス有利・フランス不利」の構図をもたらし、フランスは経済的にも後進国に転落していった。
この通商条約に関しては、破棄か維持かをめぐって、当時の陳情書の中に、様々な意見が出されていた。
概して、貴族たちは、条約破棄はイギリスとの戦争につながる恐れがあると考え、維持する方向の意見が多かった。
一方で、第三身分の平民は、条約のせいで国の衰亡を招くよりは、戦争の危険をおかす方がはるかにましだ、との過激な主張をしていた。
往々にして、時代や地域を問わず、民衆の方が、戦争をもいとわない態度をとる傾向にあるようだ。
また、1788年は、穀物が不作で、深刻な食糧不足、物価高などが社会を襲った。
このため、バスティーユ襲撃の前から、民衆は蜂起したり、暴動を起こしていたのだ。
穀物を貯蔵しているとか横流ししているなどと疑われた人々の住居を民衆が襲撃したり、焼き討ちすることなどは頻繁に起こっている。
1789年の春以降、民衆や貧民による騒乱や暴動はフランスのほとんどの都市で複数回、勃発した。
89年の7月は、収穫期の直前であったため、食糧不足は頂点に達し、騒動・蜂起の頻度は倍化したのである。
要は、バスティーユ襲撃が民衆蜂起の始まりではなく、すでに食料不足などの切実な理由から、騒乱や暴動をおこすことに慣れていた民衆の暴力行為が1789年7月14日の監獄襲撃・占拠事件だったということ。
*とにかく、日本の左翼やリベラルのほとんどは、なんにもわかってないくせに、フランス革命を美化したがる。
本当に、連中はどうしようもない程、不勉強で能天気。
奴らは、口を開けば、「王の圧政に苦しめられていた民衆がついに、蜂起してバスティーユ牢獄を襲撃した。あの「圧政の象徴」であるバスティーユを!なんと、素晴らしいことか!」などど寝ぼけたことをほざいている。
これまでの当ブログ「暗黒のフランス革命」シリーズを読んでくれた常連さんがたには、左翼やリベラルの発言がツッコミどころ満載であることは一目瞭然であろう。
また、あの連中はこんな発言も好きだ ~ 「啓蒙思想に目覚めた大衆が、自由と平等を求めて、ついに立ち上がったのだ。なんと、素晴らしいことか!」
ホント、民衆が引き起こした暴動や殺戮を頓珍漢なまでに美化しすぎている。
啓蒙思想もなにも、識字率の低い当時の民衆が小難しい本を読んだり、まっとうな議論をするほど知的に成熟していたとは想像しがたい。
貴族の一部と富裕層や知識人層が一般大衆を先導して(=煽って、焚きつけて、洗脳して)、切羽詰まった民衆が自由と平等ではなく、「パン」を求めて暴れまわったのが真実の姿に近いであろう。
最近の研究によると、フランス革命と帝政期の戦争で命を落とした(処刑、戦死、リンチ・虐殺など)犠牲者の数は200万人だという。
(帝政期をあえて含めたのは、フランス革命が起こっていなければ、ナポレオンの台頭もなかったからだ)
当事のフランスの人口は2300~2700万人(諸説あり)だと言われている。
その中で、200万人という膨大な流血をみた、この凄惨で、まさに地獄の内戦(=フランス革命)を美化する神経というか感覚がブログ主にはまったく理解できない。
おそらく、日本の左翼やリベラルは、暴力を賛美しているのだろう、心の中で、密かに。
今回はこのあたりで止めておきたい。