大航海時代(=大侵略時代=大虐殺時代)における西欧列強の横暴は、これまでも当ブログにて何度も振り返ってきた。
今回は、スペインによるアメリカ支配において忘れてはならない「エンコミエンダ制」について。
◎エンコミエンダ制とは
⇒スペイン国王がコンキスタドールや入植者に、征服地の先住民をキリスト教徒に改宗させれば、労働力(実質上は奴隷)として使役することを許可した制度。
⇒代表的なコンキスタドール(征服者)は、コルテスやピサロ。
⇒コルテスはアステカ王国を、ピサロはインカ帝国を滅ぼした。
◎すべてはスペイン人の勝手な都合
⇒先住民の意思など、すべて無視して、キリスト教徒を増やしたいというスペイン国王の独善性が見てとれる。
⇒現地のスペイン人は「キリスト教化」政策などには興味はなく、とにかく金銀その他の財宝の獲得に血眼となった。
⇒一応、先住民を改宗させたことにしておけば、あとはエンコミエンダ制が隠れ蓑となったため、強欲な入植者たちはインディオを酷使し虐待し、莫大な富を蓄積していった。
◎銀山の発見がインディオの悲劇に
⇒1543年にポトシ銀山が発見された。
⇒この銀山はアメリカ大陸最大の銀山であり、一時期は世界最大の銀産出量を誇ったという。
⇒スペイン人は、銀山でインディオを文字通り「死ぬまで」こき使って、銀を採掘させることで膨大な利益を得た。
⇒劣悪な環境の中で、人間扱いされずに奴隷労働を課されたインディオたちは次から次に命を落としていった。
◎宣教師の中で唯一良心を持つ(?)ラス・カサスの訴え
⇒当時のキリスト教宣教師は、国家の対外侵略政策の先兵であった。
⇒ところが、たった一人だけ、ラス・カサスというスペイン人宣教師には良心があり、インディオの置かれた悲惨な状況をスペイン国王に訴えた。
⇒スペイン国王はエンコミエンダ制から、国家による直接経営に切り替えようとしたが、現地の入植者たちの反発もあり、結局はインディオの窮状は変わらなかった。
⇒ラス・カサスの『インディアスの破壊についての簡潔な報告』は岩波文庫で読むことができる。
◎スペイン人にとってインディオや黒人は人間ではなく、ただの使い捨ての「労働力」
⇒スペイン人の強欲を満たすために奴隷化されたインディオたちの人口は激減していった。
⇒そこで、スペイン人はアフリカから黒人奴隷の輸入を開始する。
⇒黒人奴隷はいわゆるプランテーションにおける労働力の主力として酷使された。
基本的には狩猟民であるインディオよりも、黒人の方が農作業に使い勝手がよかったのもスペイン人にとっては好都合であった。
◎前述のように、すべてはスペイン人の勝手なやり口
⇒とにかく、スペイン人は自分たちで自分たちに都合の良い理屈を唱えて、勝手にルールを作っていく。
⇒スペインは、植民地に黒人奴隷を輸出する商人に対して「アシエント」を発行する。
⇒このアシエントとは、スペインが貿易商に黒人奴隷貿易を許可する証明書である。
⇒スペイン王室は、奴隷貿易請負業者にこのアシエントを与え、その見返りとして契約料と税金を徴収した。
⇒こうして、黒人をモノ扱いして勝手な制度を設けることで、スペイン王室には巨万の富が転がり込むのである。
本当に、好き勝手のやりたい放題。
当ブログで、何度も書いたが、当時の大国はなりふり構わず、欲望の赴くままに傍若無人の振る舞いに興じた。
この連中は多民族や異教徒などは、虫けら同然とみなしていたに違いない。
◎おわりに
最近の記事でスペインやポルトガルの過去の行為に焦点を当てているが、別に悪意を持って誇張しているわけではない。
事実を事実として、紹介しているだけである。
まだまだ触れていない歴史事実も多々あるので、おいおい披露する機会もあるかもしれない。
追記
一見、「良心の人」のようなラス・カサスだが、実は、かなり怪しいところもある。
奴隷化されたインディオの人口が減っていくなかで、ラス・カサスは代替案として「黒人の使用」を提案したことがあった。
つまり、ラス・カサスにとってはインディオよりも黒人の命のほうが軽かったのであろう。
後に、本人はこの一件を反省していたとは伝えられているが、、、、