みんな知っている東大寺。
奈良の大仏と言えば、東大寺。
この名前を聞くと、「聖武天皇」や「鎮護国家」等がすぐに頭に浮かんできますよね。
さて、今回は東大寺は何宗のお寺かを中心に記事を組み立ててみたいと思います。
◎東大寺は何宗のお寺ですか?
⇒東大寺は華厳宗の大本山、つまり華厳宗のお寺です。
⇒華厳宗とは南都六宗の一つです。
⇒南都六宗とは三論宗・成実宗・法相宗・俱舎宗・華厳宗・律宗のことです。
◎南都六宗とはどんな宗派ですか?
⇒天台宗や浄土真宗や真言宗や曹洞宗のような平安時代以降の「宗派」とは異なり、今日の「学派」や「学説」のようなものです。
⇒この六宗≒六学派≒六学説の目的は「鎮護国家」にありました。
⇒つまり、国を治めるために仏教の教えを利用したいという朝廷や豪族が支えたのが南都六宗です。
◎南都六宗は学派・学説ですから、一つの寺ですべてを学ぶことも可能でした。
⇒これを、「六宗兼学」といいます。
⇒東大寺はこの「六宗兼学」の寺で、平安時代には天台と真言を加えて「八宗兼学」の寺になるのです。
⇒比叡山延暦寺が「八宗兼学」と言われるのも、これと同じ意味を持ちます。
⇒ちなみに、大阪の四天王寺(聖徳太子創建)も「八宗兼学」の寺です。
◎華厳宗とは?
⇒華厳経を主要経典とする大乗仏教の一派です。
⇒華厳経では、人はこの世界で生きたまま仏(ブッダ)に会うことができると説きます。
⇒宇宙に存在するすべての仏は「毘盧遮那仏 びるしゃなぶつ」という一人の仏に収束されると教えています。
◎毘盧遮那仏は宇宙の中心
⇒毘盧遮那仏は蓮華座に座り、宇宙の中心にあって宇宙全体を照らしているとされます。
⇒その蓮華座には1000の蓮弁があります。
⇒その蓮弁の一つ一つに仏がいて、三千世界(無数の小世界から構成される大宇宙)を内包していると説きます。
⇒無数の小世界の各々に仏が存在し、その中の一つの小世界が我々が住む世界であると教えています。
⇒そして、宇宙に無限に存在する仏は毘盧遮那仏そのものであると説いていきます。
⇒このように宇宙の無数の仏がつながっているのだから、一人の仏を供養すれば無限の仏を供養したことになると教えます。
これを、華厳経では「一即多・多即一」(一はすなわち多であり、多はすなわち一である)という表現を使い、時空を超えた世界観を説明しています。
この華厳経の考えをある仏教学者がインターネットに例えて説明しています。
⇒ネットワーク全体が一つの存在であり、これが毘盧遮那仏である。
⇒各世界の仏は毘盧遮那仏(=ネット本体)の先に存在する。
⇒さらに各々の仏からまた別の世界の仏が放射状につながり、無数の仏世界が宇宙に広がっている。
◎奈良の大仏の正体がこの「毘盧遮那仏」だから、鎮護国家につながるとの狙い。
⇒朝廷は「中央集権国家」の確立と鎮護国家を目的として、華厳経の宇宙観を利用した政策を行います。
⇒奈良(当時の都・国家の中心)に大仏(=毘盧遮那仏)を安置し、全国各地に国分寺と国分尼寺を配置することで、毘盧遮那仏(ネットワーク本体)からそれぞれの世界(地方寺院)にメッセージを送りつつ、奈良が全国を司るという意味を持たせたわけです。
このように見てくると
*聖武天皇の狙いや鎮護国家思想についても理解しやすいのではないでしょうか。
当時の聖武天皇とそのブレーンたちの構想は以下のようなものだったのでしょう。
聖武天皇=毘盧遮那
各国の国分寺=蓮弁上の仏
各地の寺院=小世界の仏
*だから、東大寺が国分寺の中心をなす「総国分寺」と位置付けられたのです。
東大寺に関しては、宇佐八幡神宮との絡みなど他にも触れたいことが多々ありますが、、、
またの機会にしたいと思います。