家の宗派のことを少しだけ知ろう ~ 今回は密教 真言宗登場!

意外にも、この「家の宗派」シリーズは好評のようで大変ありがたいことです。
今回は、いよいよ、密教登場!、ということで真言宗を取り上げます。

本題に入る前に、一言。
当ブログで、時々真言宗や高野山をいじっていますが、あれはあくまでネタの一環で、他意はありません。
密教という神秘的な世界観に対する興味の裏返しですので、ご容赦くださいませ。

◎真言宗の開祖は空海(弘法大師 774~835年)
長期留学僧として唐に渡り、真言密教を学び、帰国後に真言宗を確立しました。
能筆家としても有名で、嵯峨天皇・橘逸勢と共に「三筆」のひとり。
例の、「弘法も筆の誤り」はよく知られていますよね。

◎空海の著作は『秘密曼荼羅十住心論』『秘蔵法輪』
~仏教各派の中で密教が最高のものである。真言密教は顕教よりも優位であり、顕教の教えも真言密教に包摂されている~、というのが空海の主張のようです。
ただ、密教は、その名の通り「部外秘」の教えですから、素人にはわからないことも多いですね。

◎天台宗の密教(=台密)と区別するために、真言密教を「東密」と称することもあります。
これは、東寺(別名 教王護国寺)を基盤としたためです。

さて、ここまでは無難な記述をしてきましたが、ここから先はちょっと細かいことを見ていきましょうか。

*「密教」とは?「顕教」とは?
・密教⇒優れた理解力・洞察力がある者にだけ「内密に」教授される特別な「秘密の教え」のことです。
・顕教⇒秘密にせずに、誰に対しても「顕かに」(=あきらかに=公然と)説かれた分かり易い教えのことです。

*当ブログですでに紹介した「浄土宗」「浄土真宗」が顕教の例です。
ただし、法然と親鸞自身は比叡山(=密教も含む)で学んでいるため、全く密教と無縁だとは言えませんよね。
この辺が、鎌倉仏教の特異性というか興味深いところでもあるんです。

*密教の成立
インドで4~5世紀ごろ、ヒンドゥー教の勢いにおされ衰退していた仏教が生き残りをかけて、バラモン教やヒンドゥー教の呪術的な要素を取り入れて生まれたのが密教の起源と考えられています。
最初は教義も整理されていなくて、経典が成立し体系化されたのは7世紀ごろと言われています。

*真言密教
根本経典は『大日経』と『金剛頂経』です。
唐の僧侶である恵果(けいか 746~805)がこの二つの経典を統合して、真言密教の基礎を創りました。
空海は、この恵果に直接師事して密教を学び、奥義を伝授されたのです。

*密教の目的は
密教修行の最終目的は、「即身成仏」だとされています。
即身成仏とは「生きたまま仏の境地に至る」ことです。
「即身仏=ミイラ」と混同しないでくださいね。

*「三密加持(さんみつかじ)の行」が重要⇒三密=身密+口密+意密
身密とは、手で印を結ぶこと
口密とは、真言を唱えること
意密とは、宇宙の真理を心に思い描くこと

さて、「真言」や「曼荼羅」についても少し説明したいところですが、あまりクドイと例によって愛読者さんからクレームが入りますので、そろそろまとめに入ります。

前述したように、密教が成立したのは4~5世紀ごろで、釈迦入滅から数百年後のことです。
しかも、本来性質を異にするバラモン教やヒンドゥー教の呪術的要素を取り込んでいるため、初期の仏教の教えからは大きく変化しています。

この「変化」を「発展・前進」ととらえるか、それとも初期仏教からの「逸脱・後退」とみなすかはブログ主の判断するところではありません。
ただ、すでに見てきた浄土宗も浄土真宗も真言宗同様、初期仏教とは大きく異なります。

真言宗にしろ天台宗にしろ、その活動の一部分である「加持祈祷」の「現世利益」的な面を近代的な価値観から見て、否定的にとらえる学者・歴史家もいます。
しかし、仏教に「救い」を求めている人々からすれば、「現世利益」的であることは大きな魅力でしょう。

真言宗の開祖空海は、日本全国で300を超える「弘法大師伝説」を持つ、一種の超人です。
全てが真実ではないでしょうが、実際に決壊した溜池を修復したり、温泉を掘り当てたり、土木工事に力を発揮したのでしょう。

周知のとおり、空海は唐で土木技術や薬学など、密教以外の様々な分野も学んでいます。
当時の最新技術や知識を駆使して、朝廷や民衆のために尽力したからこそ、これほど多くの「空海伝説」が残ったのではないでしょうか。

ということで、今回はこの辺にしておきます。