2023年10月25日、米東北部メーン州ルイストンで複数の銃撃があり、少なくとも18人が死亡し、数十人が負傷しているとの報道があった。
地元紙サン・ジャーナルによると、容疑者は40代の男とみられるとのこと。
まず、ボウリング場で銃撃した後、近くの飲食店でも発砲、さらにウォルマートの店舗でも銃撃。
容疑者は逃走を続けている。
(その後、27日に容疑者ロバート・カード(40)の遺体が発見された。
自殺とみられるとの報道があった。
確認された犠牲者は死者18名、負傷者13名)
被害者の多さから推測すると、凶器の銃は殺傷力の高い半自動小銃の系統ではないだろうか。
(事件現場での映像写真からは、半自動小銃に見える銃を容疑者が構えている)
今回は、非常に危険なアサルトウェポン(半自動小銃など)の規制について簡単に見ていきたい。
最初に、結論めいたことを書くと、2022年の規制においても販売禁止には至っていない。
まず、1994年に成立した「アサルト・ウェポン規制法」についてごく簡単に説明すると
① 当時のクリントン政権(民主党)が成立させた。
② 具体的に複数の銃器を「アサルト・ウェポン」と指定して、その製造・所有・譲渡を禁じた時限立法(10年間)であった。
③ また、11発以上装填できる弾倉の所持と譲渡も禁止した。
*しかし、以下のような抜け道があった。
ア 指定されていない危険銃(半自動小銃)もあった。
イ 銃には後から、多くの改造を施すことができた。
ウ 最大の抜け道は、この法案が成立した後に製造された銃器に対してのみ規制が適用されることであった。
つまり、成立前に製造されていた銃器に関しては何の効力も無かったのである。
以上がアサルト・ウェポン規制法のごく簡単な説明である。
上の②に記したように、10年間の時限立法であり、2004年に失効した。
この規正法の効果については様々な意見がある。
特定の殺傷力の高い銃器の製造・所有・譲渡を禁じた点を高く評価する意見がある一方で、上記のア~ウなどの抜け道があったため、期待ほどではなかったと考える人もいる。
さて、アサルト・ウェポン規制法が成立してから、実に28年振りの2022年6月に、銃の安全対策を強化する超党派の法案が可決された。
今回は野党であり銃規制に消極的な共和党からも十数名の賛成票が出た。
2022年6月25日、バイデン大統領が連邦議会が可決した銃規制強化の法案に署名し成立させた。
その内容を簡単に説明すると、
*21歳未満の銃購入希望者に対する身元確認調査を強化する。
*裁判官が危険と判断した人物から銃を押収する緊急措置を導入している州を支援する。
*結婚していない交際相手への暴力・虐待で有罪判決を受けた者には銃器を販売しない。
*メンタルヘルスプログラムや学校警備の強化策に連邦予算150億ドルをあてる。
などである。
約30年振りの銃規制法ではあるものの、多くの民主党議員や活動家が求めてきた大幅な規制強化には程遠いものである。
以下に、「✖」印でバイデン大統領が求めていたが成立しなかった項目を挙げる。
✖アサルト・ウェポンは禁止されなかった。
✖銃購入可能年齢の18歳から21歳への引き上げは盛り込まれなかった。
この法案成立の約一か月前、2022年5月24日にテキサス州ユヴァルディの小学校で銃撃事件があり、小学生19人と教員2人が死亡した。
犯人は18歳の少年で警察との銃撃戦で死亡。
この18歳の少年は拳銃とアサルトライフル銃「ARー15」と大容量弾倉を携行していた。
この実行犯は18歳になった数日後に、アサルトライフルを二丁購入したとされている。
アサルトライフルはもちろん、「アサルト・ウェポン」である。
アサルト・ウェポンで18歳の少年が21人の命を奪った直後の銃規制法案に、「アサルト・ウェポンの禁止」も「銃購入年齢21歳への引き上げ」も盛り込まれなかったのである。
さて、2023年に話を戻す。
銃被害の統計をまとめる「ガン・バイオレンス・アーカイブ」によると、今年になって米国内で一度に四人以上が銃撃された事件は10月25日までに565件に上っている。
また、今年に入ってから米国内で銃で死亡した人は、10月25日までで、自殺を含めると3万5200人となっている。
バイデン大統領は、今回のメーン州での銃撃事件を受けて、「容認できない」と発言し、銃規制をさらに強化する必要性を訴えている。
今後、どのような動きがあるのか、それはまだわからない。