ソクラテスのやること、えげつないですよ

今回は、ソクラテスの言葉ではなく、他者が描くソクラテスの行動です。
この有名な哲学者の行動は、やられる方にはかなりこたえたはずですよ。

Socrates used to ask question after question of men who pretended to be wise, endeavouring to let them see for themselves that, after all, they knew indeed quite little.

⇒ソクラテスは利口ぶった連中に次から次へと質問を浴びせていき、アレコレ知ったかぶりしても、実はほとんど何にもわかっちゃいないことを常に思い知らせていた。(ぶっちゃけ訳です。直訳も後で行います)

まず、コンマの前までを見ていきます。
Socrates used to ask question after question of men who pretended to be wise

Socrates = S
used to = 助動詞扱いする
ask = V
question after question = O (ask O of ~ = ~にOをたずねる)
*menまでを訳すと、

⇒ソクラテスは人々に次から次に質問をよくおこなっていた

who pretended to be wise はmenを修飾する関係代名詞節です。

who = S
pretended = V
to be wise = O

では、コンマの前のところを訳します。

⇒ソクラテスは、賢いふりをした人々に次から次に質問をよくおこなっていた。

つぎに、endeavouring to let them see for themselves that, after all, they knew indeed quite little.の部分。
, endevouring以下は分詞構文です。
endeavour to = try very hard to
let them see は「let+ O+原形」のパターンで、「Oに~させてやる」が直訳です。
for oneselfは「自分で」

that以下はseeの目的語、このseeは「見える」ではなく「~がわかる」の意味です。
after allは、ふつう「結局」と訳す例のやつです。

that 以下の構造は、
they = S
knew = V
quite little = O (littleは否定的なニュアンス、「ほとんど~ない」)

では、endeavouring以下を訳します。

⇒彼らが、結局ほんのわずかなことしかわかっていないことを自分たちでわからせようと努めながら

*ここの分詞構文は、あえて分類するなら、「付帯状況」になります。
訳し方は、「S+V,~ing」⇒「SはVして、~する」か「Sは、~しながらVする」が直訳です。
当然、「直訳」が不自然なら、意訳が必要です。

さて、ようやく、ここで全体を訳します。上はほぼ直訳、下は意訳です。

⇒ソクラテスは賢い振りをしている人たちが、結局のところはほとんど知識がないと自分で気づくように、次々に質問を繰り返すのを常とした。
⇒物知り顔の連中に、矢継ぎ早に質問を浴びせるのがソクラテスの常とう手段であった。問答を繰り返して、相手が自らの不勉強を悟るように仕向けていたのだ。(「不勉強」を「無知」と訳すか、迷っています)

*今回の読解のポイントは、分詞構文をとらえること、let以下がやや込み入っているので正確に構造を把握することです。

*蛇足
・再度、確認ですが、littleは否定的なニュアンス「ほとんど~ない」です。
・毎度おなじみのafter allは、「結局」が直訳ですが、この文脈では、ソクラテスと相手との間の「やり取りがいろいろとあった後の結果は実は」というニュアンスを持っている。
そこで、ぶっちゃけ訳では「アレコレ知ったかぶりしても」、意訳では「問答を繰り返して」と訳すことで、このニュアンスを出そうとした。