モームも言いたい放題「道徳心のカケラもない連中は」

今回は、William Somerset Maugham(1874 ~ 1965) という小説家の言葉で英文読解をやってみます。
この人物はスパイの経歴も持つ異色の作家です。
Maugham のカタカナ表記が「モーム」です。

There are some people who are born without a moral sense. They are as unable to distinguish between right and wrong as a man who is colour blind between red and green.

⇒生まれた時から、道徳心のカケラもない連中がいる。そういう奴らは、いいことと悪いことの区別がつかないんだよ。色盲が赤と緑を見分けられないのと同じさ。(*数十年前の英文の訳ですから、あえて、「色盲」としています)

では、一文目を考えましょう。
There are some people who are born without a moral sense.

are = V
some people = S

who are born without a moral sense はsome peopleを修飾する関係詞節です。
who = S
are born = V

では、訳します。
⇒道徳観念なしで生まれる人々がいる。
⇒生まれつき道徳観念がない人々もいる。

次に、二文目を見ていきましょう。
They are as unable to distinguish between right and wrong as a man who is colour blind between red and green.

They = S
are = V として、unable = Cととるのが1つの考え方で、もう一つは
are unable toを助動詞扱いして、distinguishをVとみなしても可です。
すると、distinguish between A and B(AとBの区別をつける)をしっかり意識できます。

*as 現級 as に気づきましたか。
as unable to distinguish between right and wrong as ⇐asとasの間の「現級+語句」が長い!

*前半のasとasをはずして、訳を確認します。
They are unable to distinguish between right and wrong
⇒彼らは正しいことと間違ったことを区別することができない。

*後半には省略がありますので注意しましょう。
省略を(  )内に示した形は、
⇒a man who is colour blind ( is unable to distinguish ) between red and greenとなります。

上の文の構造を確認します。
a man = S 
is unable to =助動詞扱いします
distinguish = V

who is colour blind はa manを修飾する関係代名詞節です。
who = S
is = V
colour blind = C

では、後半部を訳してみます。
⇒色覚に異常がある人は赤と緑の見分けをつけることができない。

*文全体は、They are unable to distinguish between right and wrong a manと who is colour blind( is unable to distinguish) between red and greenの程度が同じであると主張しているのです。

では、二文目の全体を訳します。
⇒彼らは、色覚に異常がある人が赤と緑を見分けられないのと同じくらい、正しいことと間違ったことの区別がつかない。
⇒彼らが善悪の判断をつけることができないのは、色覚異常の人が赤と緑を見分けられないのと同様のことだ。

*今回の英文は、同等比較(as原級as)をしっかり意識することと省略を見破ることが読解のカギとなります。

蛇足ですが、
*colourの綴りから、イギリス英語であることがわかります。
*color-blind(ハイフン付き)も正しい綴りです。
*color blind には、「人種的な偏見がない」「人種差別をしない」という意味もあります。