常に本音で語った男、George Bernard Shaw(1856~1950) 。
ネット検索すると、このノーベル文学賞受賞者の名言がすぐに出てきます。
さて、今回の氏の言葉が名言かどうかは、読む人しだいでしょうか。
Money is the most important thing in the world. It represents health, strength, honor, generosity, and beauty as conspicuously as the want of it represents illness, weakness, disgrace, meanness, and ugliness.
⇒何といっても、この世は金、金だよ。金があるからこそ、健康に恵まれ、体力もつく。名誉も手にして、寛大な心で人に接するし、美しい姿でいられる。金がない人間は、病気がちでひ弱な身体。人から見下されるし、心も貧しくなり、おまけにみすぼらしい姿をさらす。明々白々、自明の理さ!(⇐ぶっちゃけ訳の拙訳です)
もちろん、文構造の解説後に、「直訳」を提示します。
では、一文目を見ていきます。
Money is the most important thing in the world.
Money = S
is = V
the most important thing = C
では、訳します。
⇒お金は、この世の中で一番重要なものです。
次に、二文目を見ていきますが、長いので、as の前でいったん止めます。
It represents health, strength, honor, generosity, and beauty
It = S
represents = V
health ~ and beauty = O このOは、五つの名詞が列挙されています。
ここまでを直訳すると、
⇒お金は、健康、強さ、名誉、寛大さ、美を表す。
次に、残りの部分を考えます。
as conspicuously as the want of it represents illness, weakness, disgrace, meanness, and ugliness.
as conspicuously as = as 現級 as の構文
the want of it = S
represents = V
illness ~ and ugliness = O このOも、五つの名詞が列挙されています。
*全体を見ると、「SVO+as現級as+SVO」の構造です。
*また、前半も後半も、Oの部分は五つの名詞が列挙される形です。
*それぞれ五つの名詞は、反意語同士が対応しています。
health – illness / strength – weakness / honor – disgrace / generosity – meanness / beauty – ugliness
では、二文目の全体を直訳しますが、非常にわかりにくい日本語になってしまいます。
⇒お金は、お金不足が病気、弱さ、恥、吝嗇、醜さを表すのと同じくらい顕著に、健康、強さ、名誉、寛大さ、美を表す。
*わかりにくですね、直訳は! 今回は、典型的な「直訳の限界」の例です。
*as 現級 as の直訳パターンをやめて、前半と後半の両方に「現級」の訳を入れてみます。
⇒お金は健康、強さ、名誉、寛大さ、美を顕著に表しているし、同様に、金欠は病気、弱さ、恥、吝嗇、醜さを顕著に表している。
*少しは、ましな感じでしょうか。
この文は一種の名詞構文ですから、名詞に徹して、試みに動詞representsも訳の中で名詞に変えてみましょうか、
⇒富は顕著なまでに、健康、強さ、名誉、寛大さ、美の象徴であり、貧困は同様に、病気、弱さ、恥、吝嗇、醜さの象徴である。(⇐まあまあですか?)
または、名詞を形容詞や動詞のようにほぐして訳をつくるために、人を登場させる方法もあります。
例えば、money represents health and strength の部分を、人間をからめて考えてみると
⇒money makes people healthy and strong(お金があると人は健康で強くなる)とか、
⇒rich people are healthy and strong(金持ちは健康で体力がある)のように置き換えて処理してみましょう。
⇒お金があれば、明らかに、人は健康で強健になり、対面も保てるし、寛大な気持ちになり、華麗な姿でいられる。一方、貧乏だと、当然のように、病気にかかり、身体はひ弱で、人前で恥をかき、心も狭くなり、みっともない姿をさらしてしまう。
*原文は前半、後半に名詞が五つ連続で並んでいますが、少し切れ目を入れて、訳をつくってみます。さらに、「as現級as」の部分も切りはなして最後に処理します。
⇒裕福な人は、健康で体力があり世間体もいい。心は広くなるし、見た目もうつくしい。一方、貧しいひとは、病気がちで体力もなく人前で恥をかく。心も貧しくなるし、みすぼらしい恰好になる。両者の差は歴然としている。
今回の英文は、直訳だとわかりにくい和文になります。
ただ、意訳が過ぎると、それはそれで不安を覚える人もいるでしょう。
なかなかむずかしいところですね、今回の訳づくりは。