「人間は平等ではない」Aldous Huxley

昔の知識人は歯に衣着せぬ物言いをします。
今回の英文の執筆者は、Aldous Huxley(1894~1963) という人物。
さて、この著述家の主張は、

That all men are equal is an assertion to which, at ordinary times, no sane human being has ever given his assent. A man who has to undergo a dangerous operation does not act on the supposition that one doctor is just as good as another.

まず、ぶっちゃけ訳を下に。(あとから、直訳します)

⇒本音で話せる場面で、「人間はみんな平等だよ」とか言われても、まともな人間なら「その通り」とうなづいたりしないよ。考えてもみろよ、下手すりゃ死ぬかもって手術の前に、「お医者様なら誰でもいい」なんて能天気でいられるかい。

では、一文目から
That all men are equal is an assertion to which, at ordinary times, no sane human being has ever given his assent.

That all men are equal = S ( That内は、all men = S / are = V / equal = C )
is = V
an assertion = C⇒全体は、SVC=第二文型です。
to which ~ his assent の部分はan assertionを修飾する関係代名詞の節(節=文中にSVを含むひとまとまり=文中の文)

to which以下は、
at ordinary times = 副詞句
no sane human being = S(noが付いているので、文全体は否定で訳します)
has given = V
his assent = O

to whichのtoは、give his assent toの toがwhichの前に出た「前置詞+関係代名詞」のパターンです。

では、一文目をほぼ直訳でやってみます。ただし、「現在完了」の味を訳に出したので、チョットくどいですね。
⇒人は皆平等であるということは、通常の場面では、正気の人間なら昔も今も決して同意しない主張である。
⇒人は皆平等であるという主張に対して、通常の場面では、分別のある人間で、この主張に同意した者はこれまでにいない。

では、二文目を見ていきます。
A man who has to undergo a dangerous operation does not act on the supposition that one doctor is just as good as another.

A man = S
act = V⇒全体はSV=第一文型です。
act on のonは、ここでは「~に基づいて」の意味です。

who has to undergo a dangerous operationは、A manを修飾する関係代名詞節です。

who = S
has to undergo = V
a dangerous operation = O

the supposition that one doctor is just as good as another

the suppositonとthat以下が同格関係です。
同格のthat以下の構造は、

one doctor = S
is = V
good = C⇒SVC=第二文型です。

as good as は、as原級asの構文で、justは「強調」です。

では、二文目を訳してみます。上はほぼ直訳、下はかなり意訳しています。
⇒危険な手術を受けなければならない人は、ある医師と別の医師がまったく同じ技量を持つという想定のもとには行動しない。
⇒命がけの手術に臨む必要のある患者は、名医もいればヤブもいると思っているので、執刀医の力量が気になるものだ。

全体を訳します。
⇒人は皆平等であるという主張は、普段の生活の中では、分別のある人間には決して同意できないものだ。リスクの大きい手術を控えた患者は、どの医師も優秀であるという想定のもとには行動しない。

*蛇足ですが

Huxley氏が、人間が皆平等のはずがないと主張しているのは、
⇒命がけの手術を受けなければならない患者は医師が全員優秀だとは思っていない
⇒名医もいれば、ヤブもいる、つまり医者には優劣があるのは常識
⇒すべての医者が平等ではない
⇒医者に限らず、人間がすべて平等のはずがない
という流れが氏の頭の中にあるわけです。蛇足でしたね。

*もうひとつ蛇足

信頼のできる腕のいい医師に診察してもらいたいのは、誰しもが思うことです。
この人間のごく自然な感情と、例のaffirmative action がらみのアレコレも米国ではちょっとした問題らしいです。
また、機会があれば、当ブログにて。