「きゃあ~~~~!」
「キャッ、キャッ、キャッ」
寮のローカが騒々しい。
「そっち、そっち~」
「逃がすな~」
「きゃ~、きゃ~」
けたたましい悲鳴か、絶叫か、、、
いや、なんか、「きゃ~」が嬌声っぽい響きだな~。
全員、男のはずだが。
長崎出身の川口が、「なんか、一年生が廊下でうるさいんだよな。何を騒いでるんだろ?」
「じゃあ、ちょっと、様子見に行くか」とこちらも答える。
廊下の隅に、何かを包囲するかのように一年が数名。
手にはポリ袋、牛乳の空瓶など。
「袋をかぶせて、つかまえたらどうだ」
「瓶の中に追い込もうぜ」
川口も私も、「???」
なんだ? 虫か小動物か?
クワガタ? ヤモリ?
一年生は興奮した様子で、「生まれて始めて見た~。俺、飼いたい」
「俺は、まず触りたい」
「飼うなら、置く部屋は交代にして、平等に可愛がろう。一人が独占しないようにな」
「どうしたの?何?」と川口。
「あ、先輩、すっごいの見つけました」
どれどれと、川口と私が視線を落とした先に鎮座ましましていたものは、、、
Mr. G におわしました。
そうです、ゴ・キ・ブ・リ!
そう、あの、ゴキブリ!
そう、あの、三冠王!
ゴキブリ=不快害虫+衛生害虫+経済害虫
「おい、手で触るなよ。それから、絶対に飼うな!」と川口。
「先輩~、生のゴキブリ、始めて見たんですよ~」
「先輩~、ペットにしたいです~」
川口の迫力(なんせ、スクワット500回を軽々とこなす剛の者)に気おされた一年がゴキブリ包囲網を解く。
すると、ペットとして愛玩される幸運を逃がしたMr. G (もしかして、Miss. G ?)はそそくさと去っていった。
後輩たちは、北海道出身。
現在はどうだかは知らないが、その当時は北海道にはゴキちゃんは棲息していなかったらしい。
とまあ、これはその後輩たちから聞いたこと。
ネットもスマホもない時代。
当時の後輩たちは、生のゴキブリやその生態などに関する知識をほとんど持っていなかった。
「ゴキブリってな、飛ぶんだよ」と川口。
「本当ですか、先輩!」
「ゴキブリ、カッコいい!」
その後も、川口による「ゴキブリ学講座」は続いたが、、、、
今回はこの辺で。