宮崎県は「神話県」である。
これには、鹿児島県という強力なライバルもいて、、、というネタですでに一つ記事を作成している。
先日、行きつけの角打ち店(酒屋)で一杯やりつつ、ふと棚を眺めると「ANENOKOYANE」という銘柄の赤ワインが目に留まった。
え、「アメノコヤネ」って、あの「天児屋命 あめのこやねのみこと」のことに違いないと思って、ラベルを調べると「MIYAKONOJO WINERY」とある。
予想通り、宮崎県都城市の醸造所だ。
さすが、神話の故郷だけあって、ワインの名前にも「天孫降臨」にまつわるものが存在するとは。
宮崎人のプライドと逞しき商魂をみる思いがする。
天孫降臨については、以前も簡単に紹介しているが、ここでも必要最低限の情報を出しておこう。
日向の高千穂は「天孫降臨」の地とされる。
ここに降り立ったのが、ニニギノミコトである。
ニニギノミコトは天照大御神のお孫さんだ。
天照の孫=天孫が、降り立った=降臨で、天孫降臨。
超大雑把で、申し訳ない。
では、赤ワイン「AMENOKOYANE」命名の元となった「あめのこやねのみこと」と天孫降臨の関係は何か?
『古事記』や『日本書紀』によれば、天孫降臨の際に、天児屋命(あめのこやねのみこと)は従者の一人としてニニギノミコトのお伴をしたとある。
つまり、天児屋命はニニギの側近である。
この天児屋命は中臣氏(=藤原氏)の祖先とされる。
あの有名な奈良の春日大社の主祭神四柱のうちの一柱が天児屋命である。
要は、藤原氏の氏神を祀っているのが春日大社だ。
それにしても、ワインに「AMENOKOYANE」と銘打って製造・販売するとは、(株)都城ワイナリーさんの「宮崎=神話県」にかける誇りを感じる。
また、この「アメノコヤネ」なるラベルを見て、「あ、天児屋命だな」と即座に反応する宮崎県民がいるという事実に、驚かざるをえない。
宮崎では、全世帯に『古事記 現代語訳』が県から支給されているという、、、嘘、嘘!
ホラ話はさておき、宮崎県民の多くは、日本神話の世界になじみがあるはずだ。
天児屋命(天児屋根命、天之児屋命などの表記もある)を祀った神社は県内に多数、鎮座している。
高千穂町の槵觸(くしふる)神社、延岡市の春日神社や祝子川(ほうりがわ)神社、都城市の春日神社などなど。
決して、関係者ではないが、都城ワイナリー「AMENOKOYANE」の紹介を少々。
ぶどうの品種はカベルネソーヴィニヨン・山葡萄交配種、マスカットベーリーA、メルロー。
色は赤で、酒質はミディアムボディ。
アルコール度数は13%である。
お味の方は、、、
当方、残念ながら、まだ賞味していない。
ワイン党の常連さんは、ぜひ、購入してお楽しみあれ。
さて、都城ワイナリーさんは「AMENOKOYANE」の名前の由来を「詔(みことのり)、祭祀の神様の名前。出世の神様としても信仰されています」と説明している。
簡潔にして適切な解説だ。
天照大御神が引きこもった天の岩屋の前で、天児屋命が祝詞を唱えたと『古事記』や『日本書紀』にある。
まさに、「詔、祭祀の神様」だ。
また、「出世の神様」というのもわかりやすい。
子孫の中臣氏(藤原氏)の栄耀栄華を思えば、誰もが納得できるだろう。
それにしても、都城ワイナリーさんは地の利を生かしているというか、日本神話をしっかり商売のネタにしている。
赤ワイン「AMENOKOYANE」以外にも、神話にちなんだ銘柄をいくつかプロデュース。
「Konohanasakuya Sparkring」「Omoikane」「Ishikoridome 2024」「Tajikarao」という顔ぶれも。
*ここで、「Konohanasakuya Sparkring」の「Sparkring」について。
都城ワイナリーさんのHPの商品一覧の表記が「Sparkring」であるから、そのまま「sparkring」を使用したが、「スパークリングワイン」に相当する英語は「sparkling wine」である。
「l」の代わりに「r」を使って「sparkring」にしたのは、なにか意図があるのだろうか、、、
話を都城ワイナリーさんのワインの名前に戻す。
蛇足ながら、「このはなさくや」とは山の神の娘、コノハナサクヤヒメのこと。
この姫と結ばれたのが、ニニギノミコトである。
次に、「おもいかね」とはオモイカネノ神(思兼神)であり、文字通り「思慮の神」だ。
天の岩屋事件の際に、天照大御神を誘い出す作戦を数々練った神であり、天児屋命が祝詞をあげたのや天ノウズメノ命が肌を露わにして踊ったのも、この思兼神のアイデアだった。
では、「いしこりどめ」とは、、、、と話を続けると、トミーから「面白くないよ!」とツッコミが入りそうなので、神々の説明はこの程度にしておこう。
つくづく、宮崎県は大和神話の故郷だ。
他県の住人よりも、日本建国の精神に触れる機会がはるかに多い。
まさか、ワインを味わいながら八百万の神々に県民が思いをはせることができるとは!
都城ワイナリーさん、今後も「天孫降臨」をモチーフとした、こだわりのワイン造りに励んでください。
貴社の商魂逞しさは愉快、痛快、爽快なり!
追記
再度、都城ワイナリーさんの「Konohanasakuya Sparkring 」をHPで確認すると、ボトルのラベル表記には「SPARKLING」とあり、「L」を使用している。