令和5年9月15日のNHK朝ドラ『らんまん』では、万太郎が熊野行きを決意。
お、熊楠が登場か、と期待したが、、、、
出ませんでした。
でも、これは史実に忠実な脚本。
というのは、牧野博士は南方熊楠とは一度も会っておりません。
書簡のやりとりはしておりますが。
牧野博士は、熊楠の住む紀州田辺に9日間逗留したことがある。
その時、知人が南方宅に案内しましょうか、と打診したらしい。
しかし、博士はその申し出を断っている。
当時の心情を、博士の文章から、
『其れはなぜならば南方君は曾て田辺の知人が東京へ来る時其人を介し植物の図など持たせて来て私に其名称などを質問したことがあつたからだ。此様に兎に角私は南方君を教えた人だから言はば同君の師であると謂える、今其師たる人が親しく我が町へ来てゐれば何はともあれ先づ取り敢へず之を出迎ふる礼を執るのが当然であつて何にも吾れから先きに進んでわざわざ先方へ足を運ぶ必要は決して認めないとの見識(ハ、、、)でとうとう同君の門を敲かなかつた』
*引用中の『わざわざ』と『とうとう』は、実際には記号が含まれる。また、『あつた』や『なかつた』等は原文ママ。
上記の引用は、雑誌『文藝春秋』(昭和17年二月号)に牧野富太郎が寄稿した『南方熊楠翁の事ども』の一節。
牧野博士が、熊楠に対する感情をストレートに表現しているところが興味深い。
「師が自分の住む町に来ていれば、弟子のほうから挨拶に来るのが当然だ。その程度の礼儀も知らない。師匠である私が、なぜ、わざわざ弟子の南方君の家に出向かなければならないのか。冗談じゃない」という感じの文面。
ドラマでは、熊野で万太郎がどんな植物採集活動をしたかは、一切描写なし。
紀州から持ち帰った「ツチトリモチ」が登場するだけ。
ただ、このツチトリモチを見つめながら、熊楠同様、自分も神社合祀政策に反対の意向を大学に示すことを匂わせている。
となると、来週以降がまた楽しみだ。
熊楠ファンである当ブログ主は、牧野富太郎博士が神社合祀政策に対して抗議のアクションを起こしたかどうかは、寡聞にして知らない。
当ブログの「読書感想」で取り上げた、志村真幸『未完の天才 南方熊楠』(講談社現代新書)にはこうある、
『牧野が神社合祀に反対したという話は聞かない。牧野は主として高等植物(被子植物、裸子植物)とシダ植物を扱い、植物以外の分野には手を出さなかった。それが熊楠と牧野を分けたポイントだったのかもしれない』
もちろん、これは志村氏の意見であって、もしかしたら、牧野博士もなんらかの行動をしたのかもしれない。
これに関しては、当ブログは「よくわかりません。確かな証拠を見つけたら、記事を書きます」の立場。
いずれにせよ、史実は史実、ドラマはドラマ。
万太郎が、神社合祀政策にどのように抗議するのかが楽しみだ。
来週も、NHK朝ドラ『らんまん』を視聴するぞ。
どうする、万太郎?
頑張れ、万太郎!