暗黒のフランス革命 その5 ~ 人権宣言は宗教! 今回は川口との対談です。 

今回は、フランス革命の核ともいえる「人権宣言」の宗教性に焦点をあてたい。
そして、今回は「フランス革命」シリーズでは初の対談形式。
相手は、当ブログが誇る、絶対王者の川口。

川口:このフランス革命シリーズは興味深く読んでるよ。
で、「その4」の終わりごろに、「人権宣言には『宗教臭』がする」とあったからね~、「我が意を得たり」とばかり対談に赴いたよ。

ブログ主:いつもアクセス、ありがとう。
それにしても、「人権宣言=宗教」に素早く反応するとは、さすが、川口だね~。
日本の左翼やリベラルのほとんどは「人権宣言の宗教臭さ」と言われてもピンとこないよね、連中は不勉強だから。

川:まあ、あの人たちは、とにかく「フランス革命は素晴らしい。人権宣言、万歳!」の一つ覚えだからね。

ブ:そうなんだよ。
川口は、偏りのない、いわば「中道」的でバランスのとれた柔軟な精神の持ち主だから、察しが速いんだけど。
ところが、ほとんどの左翼やリベラルは、人権思想が普遍的な真理ぐらいに思っているからね。
人権宣言なんて、ぶっちゃけ、ただのイデオロギー、もっとハッキリ言うと単なる迷妄、宗教に他ならないことに気づいていないんだよ。

川:そう思う。
それと、ごく一部のインテリ左翼連中は、「人権思想=宗教」を自覚しているけど、不誠実だから誤魔化しているんだ。
なんだかな~。

ブ:じゃあ、川口の方から、好きな切り口で人権宣言なり人権思想なりを料理してくれよ。

川:了解。
まず、何と言っても、人権宣言の中の「至高の存在」とか「最高存在」とか訳されているシロモノだよな。
人権宣言の前文を読むと、「国民議会は『至高の存在』の面前でかつその庇護のもとに、つぎのような人および市民の諸権利を承認かつ宣言する」とあるよね。
この「至高の存在」だか「最高存在」だかは、革命の指導者ロベスピエールが考案した「人工神」だよ、ずばり言って。

ブ:川口の言う通り!
要は、革命政府は、「革命の理念」というか「自由の理念」とでもいうものを「神」として設定し、崇める際に「最高存在・至高存在」と名付けたわけだ。
まあ、ロベスピエールは理性を絶対視していたから、「最高存在=理性の神格化」と解釈してよさそうだね。

しかし、冷静に読んでみると、とんでもないことを平気で書いているよな。
「至高の存在の面前でかつその庇護のもとに」なんて、つまり、「自分たちがでっち上げた人工神を自分たちで拝みながら、しかもその自作の神が自分たちを庇護してくれているなかで」って宣言してるんだから。

川:ホント、そうなんだよ。
ちょっと蛇足だけど、「最高存在=叡知」と説明する記述も見られるけど、理性も叡知も似たようなもんだから、、、、

とにかく、宗教そのものの構図がありありと見てとれるよね。
しかも、「宣言する」の主語は「国民議会」だからね。
結局は、国民議会が人工神を考案して、その神の名のもとに、その神から庇護を受けて、人間の諸権利を承認し、宣言するってことだろ。

ブ:100%宗教だよ。
だって、「俺たちが創って、崇めている神が守ってくれているから、俺たちは以下の諸権利を持つと俺たちで承認した」と言ってるわけだ。
ただの妄想だろ。

川:妄想だし、完全なる宗教だよ。
その証拠に、1794年にロベスピエール派が主導する革命政府は、「最高存在の祭典」という、実質上の「宗教行事」を行っているよね。
パリのシャンドマルス広場に「最高存在」を祭る巨大な祭壇を設けて、その周りを数多くの巫女たちが狂喜乱舞したというからね。
さらに、何万人もの市民が、なにかに憑かれたような歓喜の表情を浮かべて、その祭典に参加した事実がある。

ブ:なんか、アブナイ光景だよな、想像してみると。
しかも、パリ以外の全国各地でも、同様のお祭り騒ぎというか、宗教行事が行われたからな。

川:しかも、その「最高存在」を承認する際に、「カトリシズムの神」や「無神論」を批判しているんだ。
別の神を信じるものや神を信じないものを否定したうえで、自分たちの「神=最高存在」を設定しているという用意周到さ。
つまり、人権思想は「宗教」であり、しかも「排他的な宗教」と解釈していいんじゃないかな。

ブ:とにかく、「自分たちだけが正しい」とする態度、言い換えると、「一神教」的な性質を持つわけだ。
そうしてみると、人権思想を「錦の旗」とする左派が独善的なのも、理解できるな。
もともと、人権宣言に内包された「一神教的な独善性」を、無意識のうちに、不勉強な左翼やリベラルは受け継いでいると見ていんじゃないかな。

川:まあ、当たらずも遠からずだと思うし、加えて、連中が単に不勉強なだけってのもあるかな。
せっかくだから、「人権宣言・人権思想=宗教」の観点から、フランス革命のことを少し、語ってもいいかな。

ブ:もちろん、どんどん、やってくれよ。

川:さっきも少し触れたけど、革命の首謀者たちは、自分たちの神(=最高存在)を崇拝するために邪魔なカトリックを徹底的に弾圧してるよね。
あの有名な「ノートルダム大聖堂」を「理性の神殿」に改名させたなんて、序の口。
聖職者に聖職放棄させたり、教会を閉鎖して「理性の神殿」に転用する。
教会の礼拝を禁止したり、教会の銀器や鐘を没収したり、聖具や聖像画を略奪・破壊した。

ブ:あの当時の連中の行動には、「理性」の欠片もないよな。
それでいて、自分たちは「理性的」だと自負しているんだから、「盗人猛々しい」というか「面の皮が厚い」というか「厚顔無恥」というか、、、、
フランス革命の偽善性・欺瞞性・残虐性が、まざまざと現れている。

川:その通り。
人権宣言の中の「最高存在」は「理性の神格化」なんだけど、人間の理性なんてものが、いかに当てにならないか。
そもそも、理性の定義だって、人それぞれだし、理性の有無とか程度に関して判定・計量できる客観的な基準も物差しも存在しないよ。
そんなアヤフヤなシロモノである「理性」を掲げて、神格化し、自分たちの判断は「合理的」だから「正しい」世の中が実 現するという妄想がフランス革命の本質なんだろうね。

ブ:大体、自分で自分のことを「理性的」だと自負する奴なんて、信用できないよ。
周りの人間が「あの人の今回の判断は理性的だった」といった具合に、他人から見て「合理的だ」とか「感情に左右されていない」と判定する場合なら、まだしもね。

川:そうそう。
カトリック弾圧の件にもどるけど、当時の反キリスト教運動には、理性とは正反対の「感情的」で「盲目的」で「暴力的」な乱暴狼藉があふれんばかり。
ロバの群れに司教冠をかぶせて行進させたり、教会の広場に火刑台を立てて、その前で司祭を無理やり踊らせたり、もう、愚劣なことのやり放題。

ブ:聖杯で酒を飲んで、神を冒涜する言葉を吐いたりね、、、、
まあ、キリスト教の味方をするわけじゃないけど、冷静に批判する代わりに、暴力的な手段で弾圧するんだから、、、、
宗教の悪い面が、全部出てるよ、フランス革命には。

川:フランス革命の「宗教性」は、もっと多くの日本人に知ってもらいたいね。

ブ:そうだよ。
義務教育で教えて欲しいよ。
教科書に以下の記述を入れて欲しいね。

「フランス革命は人間の理性を神格化して、「最高存在」と規定した宗教性の極めて高い感情的で盲目的かつ野蛮至極な運動でした。人権宣言および人権思想は、宗教そのものです。しかも、排他性が強く、独善的な一神教的性質を持ち、キリスト教を弾圧し、あまたの自国民をギロチンで処刑しました。つまり、フランス革命は、理性の「り」の字もない非理性的な暴力の祭典だったのです」とね。

川:全く、同感、異議なし。
まあ、でも、今回は人権宣言・人権思想が100%宗教だと、再確認して、いったんキリを付けようか。

ブ:うん、そうしよう。
また、この続きは、「その6」でやるよ。

追記
ロベスピエールが主導した「最高存在の祭典」は、1794年6月8日に挙行された。
実は、それに先立って、エベールらが進めた「理性の祭典」が1793年11月10に行われていた。

この理性の祭典は、無神論的な性格が強いものであった。
ロベスピエールは、その「無神論性」を厳しく批判し、翌94年の3月に、エベール派は処刑された。
改めて、宗教色を前面に打ち出した「最高存在の祭典」をロベスピエール派が実施したのである。