家の宗派を理解するための基礎知識 その1

意外にも、「家の宗派」シリーズに対して好意的な反応が多いので、気をよくしています。
そこで、仏教と日本の宗派を理解するために、簡単なガイド的記事を作成しよう、と思い立ちました。

◎仏教の誕生から根本分裂(大乗と小乗に分かれたこと)まで

お釈迦様の時代(仏教誕生)⇒釈迦入滅(享年80)⇒弟子たちによる「仏典結集」⇒約100年後、二回目の「仏典結集」

*お釈迦様は生没年不詳で、没年では紀元前544年、486年、386年、383年など諸説あります。
*享年80はほぼ確定とのことです。

*没後の「仏典結集」とは、弟子たちが集まり、各々が聞いた教えを周りと照合・確認しながら、釈迦の「教え」としてまとめたことです。
ですから、この時に始めて、最初の「お経」すなわち仏教の「経典」が出来ました。
(ただし、この時点では文字ではなく誦出(じゅしゅつ=声に出して唱えること)され伝えられたといいます)

*その100年後の二回目の「仏典結集」の際に教義上の議論から、大衆部(のちの大乗)と上座部(のちの小乗)に分裂しました。

◎お釈迦様自身はお経を読んだことはないし、仏像を拝んだこともない。⇐案外、気づいていない人が多いですよ。

*経典の成立は釈迦入滅後ですから、当然のことです。
*仏像は紀元1世紀の終わりごろから造られ始めたようです。
*初期仏教に「偶像崇拝」の概念はありません。

◎日本の仏教宗派は大乗に属する

*日本に伝わった仏教は大乗です。
*支那から朝鮮半島を経由して伝来しました。
*公的には、百済から538年にもたらされたことになっていますが、それ以前にも帰化人から伝えられているようです。

◎日本に伝わった大乗仏典は支那で漢訳されたもの

*本来のインドのお経は、サンスクリット語やパーリ語で書かれています。
*それらの原典を漢訳したものが日本に伝来しました。

◎主な大乗経典のごくおおまかな成立順(所説あります)

般若経系統(紀元前後)⇒法華経(紀元1~2世紀ごろ)・浄土教系統(法華経とほぼ同時期らしい)⇒華厳経(3世紀ごろ)⇒密教経典(7世紀ごろ、密教の成立は4~5世紀)

*禅宗には特定の経典はありません。

◎日本の主な宗派とその根本経典(自分の家の宗派の経典の成立時期を確認してください)

*浄土宗⇒浄土教系統
*浄土真宗⇒浄土教系統
*日蓮宗⇒法華経
*真言宗⇒密教経典
*天台宗⇒法華経を最重視するが、すべてを包含する
*臨済宗⇒なし(ただし、般若心経や他数種の経を読んだりはする)
*曹洞宗⇒なし(同上)

*臨済宗と曹洞宗に関しては、ブログ主の誤認であれば、訂正します。
*曹洞宗では、宗祖道元の『正法眼蔵』を「基本経典」と位置付けていますが、一般的には禅宗系には「根本経典」は存在しないとされています。

*実は、「禅」はインド由来ではなく、支那で誕生した思想であるため、このような「曖昧さ」?というか「不可解さ」?が存在します。

◎宗祖の著作は別ですから、混同なきよう

*法然⇒『選択本願念仏集』
*親鸞⇒『教行信証』
*日蓮⇒『立正安国論』

あとは割愛します。

さて、このように見てくると、日本の仏教宗派の根本経典は釈迦入滅から数百年後に編纂されたことがわかります。
密教経典などは、下手すると千年を超えていますね。

今回はこれぐらいにしたいと思いますが、また機会を見て「大乗」と「上座部=小乗」の違いや「大乗非仏説論」などにも触れることが出来たらいいな、と考えています。