さて、今回は日蓮宗を取り上げます。
この宗派も鎌倉仏教のひとつです。
◎宗祖は日蓮(1222~1282年)
まず、清澄山(当時は天台宗であった)で学びます。
後に、比叡山延暦寺で天台教学を研鑽し、その後も諸宗を学びましたが、最終的に『法華経』が最勝の経典であると判断しました。
◎日蓮は、題目を唱えることの重要性を説きます。
題目とは、「南無妙法蓮華経」のことです。
◎日蓮の著作は『立正安国論』
執筆後に、北条時頼に提出しました。
この中で、日蓮は法然の浄土宗を厳しく批判しました。
念仏の流行を放置すると、内乱が起こり、外国の侵略を受けて日本は危うい、と主張。
(⇒これが、後に「元寇」を予言していたと評価される)
正法である法華経を国家の中心に据える必要性を説きました。
◎激しく他宗を批判する日蓮
日蓮は法華経を重視しない宗派を激しく批判しました。
その際に有名なものが、例の「四箇格言 しかかくげん」です。
◎四箇格言とは
⇒「念仏無間、禅天魔、真言亡国、律国賊」というもので、他宗を攻撃したものです。
念仏無間=念仏を唱えていると(浄土宗・浄土真宗を信仰すると)無間地獄に落ちるという意味でしょう。
禅天魔=禅宗は独りで悟ったふりをしている魔物だという意味と考えられます。
真言亡国=真言密教は国を滅ぼしてしまうと言いたいのです。
律国賊=律宗などは国賊であると断じています。
◎ただし、日蓮は天台宗は批判していない。
それは、日蓮が若き日に比叡山に学び、開祖最澄を尊崇していたからです。
しかも、そもそも天台宗は八宗兼学ではありますが、『法華経』を最重要視しているからです。
では、以下は細かい点を見ていきましょう。
*法華経の教えとは?
簡単に言うと、「誰でも仏になれる」という教えを強く主張しています。
また、「法華経を讃えながら暮らすことが、ブッダへと向かう菩薩のみちである」と説いています。
さらには、「『法華経』を憶え、読経し、人に説き、写し書きする者は、眼・耳・鼻・舌・身体・心に多くの美点を得る」とも明示されており、現世利益的な性格も強い経典です。
*法華経が最高だと判断したのは、日蓮のオリジナルではない。
中国天台宗の開祖・智顗(ちぎ 538~597年)が、様々な経典(法華経、般若経、阿含経、維摩経、華厳経など)を分類・判定して、『法華経』を最高位に置いたのです。
もちろん、この流れが日本天台宗の開祖・最澄に引き継がれたわけです。
そして、日蓮自身も智顗と最澄の教えに生涯にわたって、忠実であろうと努めました。
日蓮が自らを「天台沙門 てんだいしゃもん」と名乗っていたのが、その証です。
*では、日蓮の何が受けたのか?
日蓮のうまいのは、「法華経信仰」を「唱題=題目を唱えること」に特化させたことです。
「南無妙法蓮華経=法華経に帰依します」と唱えれば、功徳があると説いたために、当時の民衆に広く受け入れられたのです。
日蓮が批判した浄土宗系の念仏「南無阿弥陀仏」と似ていると言えるでしょう。
*「南無妙法蓮華経」と「南無阿弥陀仏」
題目「南無妙法蓮華経」は法華経という経典への帰依、換言すると経典を擬仏化(擬神化)しているとも考えられます。
一方、念仏「南無阿弥陀仏」は阿弥陀仏(=阿弥陀如来)という仏に帰依するものでしたね。
*日蓮宗も「一神教的」性格を持つ
法華経というひとつの経典に帰依するわけですから、日蓮宗も浄土宗系と同様に「一神教的」性格を持っています。
さらに、日蓮自身も非常にカリスマ性の強い人物であり、信者の間では「日蓮上人が元寇を予言していた」とされています。
また、二度の流罪(伊豆と佐渡)を生き抜いたことも、日蓮の生涯にドラマチックな色彩を加えているのでしょう。
まあ、細かく書いていくとキリがないので、このあたりにしておきます。