妖怪のミイラのもとは人間?

水木しげるさんの本に、「不思議旅行」というものがあります。
かなり昔に、知人から紹介され、面白く?読んだ文庫本です。
それが、今年になって内容の一部を急に思い出すきっかけがありました。

去年からネットやテレビで報じられた、岡山県のある寺に伝わる「人魚のミイラ」のニュースです。
ざっと、概要を以下に。

・岡山県浅口市にある「円珠院」というお寺に「人魚のミイラ」が伝わっている。
・「元文年間(1736~41)に土佐の海で漁網にかかった人魚」と記す書き付けがある。
・この寺に来た経緯は不明である。
・全長は約30センチ、眼窩や耳、鼻、頭髪などがあり、指は五本などで上半身は霊長類に似ている。
・下半身はうろこに覆われている。
・この人魚?の正体を突き止めるために、2022年2月より、倉敷芸術科学大学の研究員が調査をおこなった。

で、その調査結果は以下のとおり。

・あご以外の頭や脊椎、肋骨などの主要な骨格はなかった。
・頭部はほぼ綿による造形で、しっくいや石膏のようなものも使われていた。
・上半身の表面は薄紙を重ねたうえにフグの表皮と動物の毛を接着していた。
・下半身は魚のヒレなどがあり、ニベ科の魚類の特徴がみられた。

調査には、X線CTも使用したそうです。
結局、頭部は完全な作り物で、なにか生き物のアタマが使われてはいませんでした。
これには、ホッとしました、実のところ。

水木さんの「不思議旅行」所収の第1話が「妖怪のミイラ」というものです。
妖怪漫画家という仕事柄か、「竜」、「河童」、「人魚」などさまざまな「妖怪のミイラ」と言われるシロモノと対面してきたそうです。
ほとんどが、一見して合成とわかるモノでが、時折、どうみても本物のようなものにぶつかることがあるそうな。
かつて、氏が見た「河童の手」はつい信じたくなるほどのものだったそうです。

今回の岡山のお寺の「人魚」は合成というか造形というか、つくりものですが、これに関しても水木さんは以下のように書いています。

・このような妖怪?の製法は中国から伝わったらしい。
・ある家系とか一族にその製法が秘伝として秘密に伝承されたのであろう。
・かつては、この妖怪たちは見世物として大いにうけていたにちがいない。
・見世物興行ができなくなったときに、寺や神社に宿泊のお礼として渡されたのではないか。

ここまでは、まだいいんですよ。
この先の、水木さんの推理が怖いんですよ。

・本物っぽいミイラ?はく製?の材料は人間の小児ではなかろうか?
・生きている子供を永久に変わらないはく製にしたてあげたのではないか?
・子供をさらって、人里はなれたところで、特別な秘伝の食べ物を与え、妖怪のはく製に作り替えたのではないか?
・「神かくし」とかいわれる事象の一部は、このような妖怪製作職人のしわざではなかろうか?

とまあ、想像するとゾッとするようなことを書いています。
今回の岡山県の「人魚」の頭部は完全なつくりものでした。
だから、ホッとしたんですよ。

もし、別の人魚なり、河童なりの調査を今回のように最新の科学技術を用いて行ったとき、、、

その頭部が小児のものであったとしたら、、、
想像するだけでも震えがきます。
なんか、パソコンのキーボードを叩きながら、戦慄しています。

というわけで、岡山県の円珠院さんに伝わる「人形のミイラ」のことから、昔読んだ水木しげる「不思議旅行」を思い出したというのが今回の小ネタでした。