南都六宗(なんとろくしゅう)について少しだけ知ろう


今回は南都六宗についてサラッと見ていきます。

◎南都六宗とは?
三論宗、法相宗、華厳宗、俱舎宗、成実宗、律宗のことです。
奈良時代に平城京で成立した日本仏教の源流のようなものと考えてください。
あ、もちろん、南都=奈良(平城京)ですよ、念のため。
ついでに、蛇足ですが、北都=京都(平安京)もお忘れなく。

◎え?仏教伝来は538年じゃなかったっけ? 奈良時代よりもかなり前だけど、、、
はい、その通りです。
ただ、538年(古墳時代末期)から飛鳥時代のころは、まだ宗派と見なされる集団は存在しませんでした。

◎南都六「宗」とは言うものの、要注意!
平安仏教の天台宗、真言宗に始まり、鎌倉仏教の浄土宗、浄土真宗、臨済宗などはそれぞれの宗祖が興した「教団組織」でした。
一方の南都六宗は、今でいうと「学派」、もしくは「学説」に近いものです。

◎南都六宗は「兼学」が可能
兼学とは、複数の教えを合わせて学ぶということです。
六つすべてを学ぶ場合に「六宗兼学」と言います。
ちなみに、平安時代以降、天台宗と真言宗を合わせると、「八宗兼学」と言いますので、これもご確認のほどを。

◎「教団」ではない「南都六宗」はどこで学んだのか?
奈良の大寺院(東大寺、法隆寺、興福寺、薬師寺など)です。
当時の大寺院を大学ととらえると、南都六宗は「学部」や「学科」と考えてもいいですね。

*では、以下は南都六宗の内容説明をほんの少しだけ

◎三論宗・法相宗・華厳宗は大乗仏教に属する。
*三論(さんろん)宗
⇒龍樹の『中論』『十二論』と提婆の『百論』、この三つの著作(三つの「論」)が宗名の由来で研究の中心となっています。

ちなみに、この龍樹(りゅうじゅ)は、般若系統の中心思想である「空」を確立した人物です。

*法相(ほっそう)宗
⇒玄奘訳の『成唯識論』を中心に研究する学派です。

実は、この「唯識」が近年、注目されています。

唯識説では、人間の意識の下に「末那識 まなしき」と「阿頼耶識 あらやしき」が存在するとしています。
この二つが、現代の心理学でいう無意識や深層心理に相当するのではないかと、研究者たちは考えています。
要は、千数百年前の仏教のある学説が、今日の学問の先取りではなかろうかとの評価を受けているのです。

この辺は、心理学のエキスパートである西川教授(アイスホッケー部)の御高説を賜りたいところですね。

*華厳(けごん)宗
⇒『華厳経』を最高の経典として研究する学派です。
⇒当ブログ記事「東大寺は何宗?」でも触れていますので、興味のあるかたはご一読を。

◎俱舎宗・成実宗・律宗は小乗仏教に属する。
*俱舎(くしゃ)宗(=法相宗の寓宗=法相宗に付随するもの)
⇒世親の『俱舎論』を中心に研究します

*成実(じょうじつ)宗(=三論宗の寓宗=三論宗に付随するもの)
⇒鳩摩羅什訳の『成実論』を中心に研究します。

*律(りつ)宗
⇒鑑真が伝えた『四分律』を研究・実践します。

◎おわりに
南都六宗は当時の僧にとっては、大寺院で自由に兼学できる学派・学説でした。
また、朝廷は南都六宗を鎮護国家のために活用することを期待して、僧に研究を奨励しました。

日本仏教が人々の救済を視野に入れ始めるのは、平安時代後期から鎌倉時代になってからです。
(あ、もちろん、空海は多くの民衆を救った伝説の持ち主です)