ノルウェーの幸福はサーミ人の不幸! ~ キレイごとは疑おう!

ノルウェーは素晴らしい国だそうだ。
国連の世界幸福度レポートでは、2024年度は第7位。
1人当たりのGDPでは、世界第4位だという。

日本の左翼やリベラルの多くも、ノルウェーを称賛する。
ちなみに、ノルウェーは王国だ。
日本の左派は自国の「皇室」には批判的だが、ノルウェーの「王室」には好意的のようだ。
本当に、不思議な思考回路だ。

ノルウェーは、「環境先進国」だという。
国内の電力の95%以上が、水力発電や風力発電でまかなわれている。
いわゆる「グリーンエネルギー」というシロモノらしい。

ノルウェーの首都、オスロ市内の地下鉄や路面電車は当然、電気が動力だ。
同政府は電気自動車使用を推進しており、充電施設も街中に豊富に存在する。
まさに、「クリーン」で「グリーン」な街づくりだ。
こういう事実を知って、日本の左派は感激して叫ぶ、「ノルウェーは最高だ!日本はダメだ!」と。

不勉強な連中が見落としているのは、ノルウェーの「クリーン+グリーン」は誰かの犠牲の上に成り立っていること。
そう、先住民であるサーミ人の生活を脅かすことで、ノルウェーは「環境先進国」という高評価を得ている。

サーミ人とは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドなどの北極圏中心に住んでいる先住民である。
かつては、「ラップ人」と呼ばれたらしいが、現在では差別的とみなされ、「サーミ人」の呼称が一般的だ。

かつて、ノルウェーはサーミ人を劣った民族だと見なして、勝手に同化政策を行った。
サーミ人の言語や文化を抑圧して、ノルウェー社会に組み込んでいったのだ。
サーミの子供を家族から引き離して、ノルウェーの寄宿学校へ連れていき、強制的にノルウェー語を学ばせて、ノルウェー人に仕立て上げようとした。

デンマークがグリーンランドの人々に対して行った抑圧と同様の政策だ。

現代のノルウェーにおいては、サーミ語を話す人々は公共サービスや医療機関で言葉の壁にぶちあたる。
当然、ノルウェー語が主流だから、多くの場合に支障が生じる。
今は、同化政策が行われていない代わりに、サーミ人はノルウェーの制度上の不備によって、「非可視化」されていると感じている。

再度、ノルウェーの誇る「クリーン」で「グリーン」な政策に話を戻す。
風力発電を推進するノルウェーは、北部の丘陵地で大規模な発電所設置を計画するが、これはトナカイの放牧を営むサーミ人の生活を脅かすものだ。

発電所以外のインフラ整備、例えば、高速道路や鉄道の建設や電波中継所の設置などによっても、サーミの人々はかつての生活圏を奪われて、トナカイの放牧や食料の確保に苦しみようになっている。

先進国の一部の人間は、「環境に優しい」とか「持続可能」などのキーワード(?)が大好きだ。
しかし、その連中が勝手に唱える「キレイごと」がサーミ人の生きる権利を奪い、彼らのアイデンティティや文化を破壊しているのだ。
ノルウェーを褒めたたえる連中は、この厳然たる事実から目を背けてはならない!

別に、当ブログは少数民族の味方を気取っているわけではない。
ただ、「環境に優しい」とか「クリーン」とかいう耳触りのいい言葉で、他人の人権や生活環境を蹂躙する人間たちの偽善・欺瞞を指摘したいだけだ。

サーミ人のトナカイ放牧にしろ、イヌイットのアザラシ猟にしろ、元々、生態学からみて持続可能な方法で行われてきた。
北の先住民たちの生き方や文化は、それこそ、昔から環境に優しいものだったのだ。
彼らから見たら、水力・風力発電所の建設は、自分たちの土地を植民地化されるのと同義だろう。

さて、先日アップしたデンマークの記事と同じようなことを書こう。
この記事は、ノルウェーのサーミ人に対する圧政を一方的に責めているわけではない。
どんな国の歴史にも、表もあれば裏もあり、光もあれば闇もある。
ある国や地域に対する高評価または低評価を鵜吞みにせずに、よくよく調べることが大切ではないか、と考えているだけだ。

言うまでもなく、現在の北欧諸国には「幸福度が高い」というイメージがある。
日本人の一部は、この実像だか虚像だかを、頭から信じて疑っていないようだ。
それだけなら、別にいいのだが、往々にして、この連中は「北欧は素晴らしい。日本はダメだ」とか、平気でのたまう。
そこまで心酔しているのなら、デンマークでもフィンランドでもノルウェーでも、好きな国に移住すればよい。

ブログ主は日本人として日本に生まれ、日本に暮らしていることに満足している。
そして、「隣の芝生は青く見える」という諺を知っている。
さらには、「美味しい話には裏がある」という表現も忘れてはいない。
ひねくれ者と思われるかもしれないが、キレイごとや耳触りのいい話は、一度は疑うことにしている。

追記
最近、すっかり常連さんになってくれたのが、友人のトミーだ。
トミーに言わせると、当ブログの記事は理屈っぽいらしい。
今回の内容はどんな感じかな、トミー?
少々「理屈っぽい」かな?