ドンにも弱点?(ゴッドファーザー小ネタ)

ドン・ビトー・コルレオーネ
ニューヨーク五大ファミリーの中でも最大の勢力を誇るコルレオーネ・ファミリーを統べる男。
暗黒街のみならず、政界、司法界にも太い人脈と影響力を持つドンの中のドン。
麻薬取引のバックアップを求めてドンに接触したソロッツォが会談の場でこんなセリフを吐く。

I need Don Corleone’s politicians you carry in your pocket like so many nickels and dimes
あなたが飼っている政治家の力を借りたいんです。山ほどいるでしょう

全米最大・最強の組織を率いるこの人物に弱点?
あるわけない、と思うでしょう。
しかし、あの男を忘れていませんか?

*ルカ・ブラージ(暗黒街最恐の男)

コニーの結婚式をドンの邸宅で行いながら来客で依頼がある者は別室で対応する。
その際にトム・ヘイゲンがルカの名前を挙げた時、ドンがほんの少し戸惑った様子を見せる。
「必要か?」とわざわざ確認してからルカと面会する。
ルカが退出た後、ホッと一息といった表情をドンが浮かべる。
映画では、微妙な描写だが、原作では、ハッキリとこう書かれている。

Brasi was the only man in the world who could make him nervous.
ドンですらルカを前にすると緊張するのである。
こんな真似ができるのは世界に一人、ルカだけ。

しかし、ルカ自身も怖いもの知らずだが、この世に一人、ドンだけを畏怖し敬愛し忠誠を誓っている。
お互いに気を使いあっているという感じ。

*ドンの良心が悲劇を招いた

ドンの良心とは何か?
映画を観ればわかるように、ドンはある種の道徳心というか倫理観を持つ男。
コルレオーネファミリーの主な収入源(任侠風に言うとシノギ)は賭博とユニオン(労働組合)。
表向きはオリーブオイルの輸入業者。

ソロッツォが持ち掛けてきた麻薬取引のバックアップを断ったのも、そもそも麻薬・ドラッグで儲けることに嫌悪感を持っていたのが大きな理由。
トムはソロッツォとの会談のかなり前から、麻薬嫌いのドンが依頼を断ることを予期していた。
その会談でソロッツォの依頼を断ったことと息子のソニーが腹の内をあかしたことで、ドンが銃撃される事態に。

もうひとつの要素は映画ではほとんど描かれていない。
それはドンが売春ビジネスを軽蔑していること。
ソロッツォとの会談前にトムがドンにこの麻薬組織のボスに関する情報を挙げていく。
実は、ソロッツォはドラッグをビジネスにする前にはタッタリア・ファミリー同様、売春で稼いでいた。
トムはあえてドンにはこの情報を伝えなかった。
しかし、ドンは事前にこれを把握しており、逆にトムに確認をとる。
この時、トムは嫌な予感がした、「これは、ますます、ソロッツォへの返事はNOになるのでは、、」
麻薬と売春、ドンが嫌悪するものが二つ揃っていた。

ドンはタッタリアなど、はなっから完全に見下している。
全米ファミリー会議の後、実は最初からバルツィーニが糸をひいていたことを見抜けていないトムに向かって、
「タッタリアなど、ただのヒモだ。奴にソニーを殺す力量などない。黒幕はあのバルツィーニだ。」と言い放つ。

麻薬と売春を毛嫌いするドンの倫理観。
これに息子ソニーのドジもあだとなり、命を狙われた。
その後、息子マイケルはソロッツォとマクラスキーを殺害し、シチリア島へ潜伏。
そこで、アポロニアと出会う。
その後、ソニーが全身をマシンガンでハチの巣にされ絶命する。
これを受け、ドンは全米のファミリーを招集し会議を開く。
その結果、他ファミリーの麻薬ビジネスに力を貸すことになる。
結局は当初のソロッツォの狙い通りになることを考えると、ある意味ドンの道徳心・倫理観が数々の悲劇を生んだことになるのではなかろうか。