2024年10月3日、イギリス政府はチャゴス諸島をモーリシャスに返還すると発表。
インド洋にある、この諸島をイギリスは、1814年に自国の統治下におく。
当時は、今回の返還先であるモーリシャスもイギリス領であった。
それにしても、今でも植民地というか海外領土というか、イギリスは本土以外の支配地を世界各地に持っている。
一方、大日本帝国は、大東亜戦争後にすべての海外領土を失った。
まさに、歴史は勝者の歴史だと、再確認した今回の報道だった。
隙間時間に、テレビのニュースなどに目を向けると、イスラエルが「これでもか」と言わんばかりに登場する。
対ハマス、対レバノン(=対ヒズボラ)、対イランなどなど、イスラエルの攻撃の手は休まることがない。
周知の通り、中東問題はややこしい。
今回の一連の戦闘(戦争)の直接の契機は、2023年10月7日のハマスによる対イスラエル奇襲攻撃である。
すぐさま、イスラエルが猛反撃を返す。
周辺諸国やいわゆる「抵抗の枢軸」の動向も絡みながら、二者間の対立は続き、2024年10月の時点で、まだ「イスラエル・ハマス戦争」は収束点が見えない。
◎ 諸悪の根源はイギリスの二枚舌外交にある。
当ブログの常連さんにとっては、「言わずもがな」のことだが、話は第一次世界大戦(1914~1918)中のイギリス外交にさかのぼる。
この大戦の二つの陣営、同盟国側も連合国側も中立国を味方につけるために、様々なエサをちらつかせて歓心を買った。
悪党のイギリスは、アラブ民族とユダヤ人の国家建設運動に目を付けた。
1915年、英はアラブ側に接近して、「フセイン・マクマホン協定」によって、オスマン帝国からの独立を約束した。
その裏で、1917年の「バルフォア宣言」によって、ユダヤ人のパレスチナ復帰運動(=シオニズム)を援助する姿勢を示した。
見事なまでの「二枚舌外交」!
すがすがしいまでの悪党ぶりである。
言うまでもなく、大戦後、パレスチナは英国の委任統治領となる。
当然、アラブ人もユダヤ人も、大英帝国の空約束に踊らされることとなった。
ユダヤ人はパレスチナに流入して、主権を主張するし、アラブ人も増え続けるユダヤ人との間で衝突を繰り返しながら、パレスチナは自分たちの土地だと力説する。
第二次大戦後の1947年、国際連合がパレスチナを分割して、ユダヤ国家とアラブ国家を樹立する決議を採択した。
ユダヤ側は受け入れたが、アラブ側が拒否して、決裂。
1948年に英のパレスチナ委任統治が終了すると、ユダヤ人が「イスラエル建国」を宣言した。
その建国宣言の翌日、エジプト、シリア、ヨルダン、レバノン、イラクのアラブ連盟五か国がイスラエルを攻撃。
これが、第一次中東戦争である。
その後の、流れや数々の戦争・紛争は割愛する。
とにかく、第一次大戦中に英国の二枚舌外交がなかったならば、ユダヤ人の「イスラエル建国」もなく、アラブ側の反抗もなく、当然、2023年10月のハマスによる対イスラエル奇襲攻撃も起こってはいなかった。
自国の利益のためなら、他民族も他国も平気で騙して利用する、大悪帝国(=大英帝国)の手練手管のせいで、中東では今日も大量の血が流れている。
◎ 国益を最優先すれば、悪党にならざるを得ない。
イギリスは、とことん「国益最優先」で外交政策を決める国だ。
自国の利益を追求するためならば、他国の事情など知ったことではない。
しかし、これは良いとか悪いとかの問題ではなく、国家のサバイバルのためには必要なことだ。
さんざん、イギリスやアメリカのことを当ブログは「悪党」呼ばわりしているが、実は、半分は誉め言葉である。
国家の興亡がかかっている局面において、自国の利益を最大限に考えるのが、外交の本質であろう。
だからこそ、必要な場合は軍事力に訴える。
戦争も善悪の問題ではなく、外交の延長、つまり国際政治の延長線上にある。
ある意味で冷徹な、この事実を考慮せずに、世界各地の紛争・戦争を語っても、何の意味もない。
国益のためには、戦争という政治手段に訴えるというのが、人間の歴史だからだ。
ただ、イスラエル・ハマス戦争の場合は、ハマスが「国家」とは言い難いために、一層、話が複雑になっている。
また、パレスチナ自体も国家として承認する国もあれば、認めない国もあり、立ち位置が微妙だ。
承認する側が多数派だが、イスラエルを始めとして、米・英・日・仏・独・伊などは承認していない。
いずれにせよ、1910年代に英国は、当時の国益を優先して、二枚舌外交を展開した。
その結果が、今日の中東問題の大元であることは間違いない。
◎ 大悪帝国(=イギリス)のやりくちを見よ。
冒頭で紹介した、チャゴス諸島返還の件を、もう少しだけ追加説明したい。
チャゴス諸島の中にディエゴガルシア島という、最大の島がある。
このディエゴガルシア島は、1966年にアメリカが英国より借り受けて、軍事基地を置いている。
要は、英米共同使用の軍事施設だ。
2001年以降の、米によるアフガニスタン空爆や2003年のイラク戦争の際に、このディエゴガルシア島が米の爆撃機や戦闘艦艇の出撃拠点となった。
つまり、戦略上、非常に重要な軍事的要衝である。
大悪帝国が、そんな貴重な軍事拠点を手放すはずがない。
そう、チャゴス諸島は返還するが、その交換条件として、ディエゴガルシア島の軍事施設は引き続き、英米が使用する形で交渉に決着を見たのだ。
しかも、その使用期間は、今後99年間であるという。
さすが、大悪帝国、抜け目がない。
まさに、見事なまでの「ワル」のやり口だ。
恐れ入りました。