知り合いから「憂国のモリアーティ」を紹介されたので読んでみたら、とても面白い!
久々にページを捲る手が止まらなかった。
そこで、手持ちのペーパーバックを調べたら出てきました、”A Scandal in Bohemia”が!
ということで、その導入部分を題材に英文読解をやってみます。
便宜上、各文に数字をふります。
1 To Sherlock Holmes she is always the woman.
2 I have seldom heard him mention her under any other name.
3 In his eyes she eclipses and predominates the whole of her sex.
4 It was not that he felt any emotion akin to love for Irene Adler.
5 All emotions, and that one particularly, were abhorrent to his cold, precise but admirably balanced mind.
1 To Sherlock Holmesは文頭副詞句です。
シャーロック・ホームズにとって
she is always the womanは第二文型ですから、直訳は、彼女はいつもその女性です、となります。
ただし、ここは後から訳を変えます。
2 seldom=rarelyめったに~ない、低頻度を表す。
動詞部は例の「知覚動詞+目的語+動詞の原形」
hearが知覚動詞、時制はhave heardで現在完了形、mentionが動詞の原形です。
直訳すると、私は彼が彼女を他の名前で呼ぶのをほとんど聞いたことがない
3 In his eyesは文頭副詞句、以下は第三文型です。
eclipsesとpredominatesが動詞でthe whole of her sexが目的語です。
her sexとは「女性」のことです。
the whole of her sexはこの世の女性全体・全員を表しています。
この辺りは、やや難でしょうか?
では、動詞をみていきます。
eclipseはto make sb/sth seem dull or unimportant by comparisonぐらいの意味です。
例、Though a talented player, he was completely eclipsed by his brother.
彼自身も才能溢れる選手ではあるが、兄と比べてると完全に見劣りした。
predominateはto have the most influence or importanceぐらいの意味です。
例、Knowledge always predominates over ignorance.知識は常に無知にまさる。
となると、彼女は世界中の女性を(彼女と比較すると)見劣りさせ、世界のどの女性よりも優位に立っている、という意味になりそうです。
実は、この3と1はほとんど同じ内容のことを表現を変えて説明しています。
1のtheの用法はまた当ブログの英文法で解説するつもりです。
4 It is not that ~「(だからといって) ~ということではない」⇐構文みたいなものです。
any emotion akin to love for Irene Adler
akin以下が後ろからemotionを修飾、akinはsimilarと類義です。
notとanyで完全否定です。
直訳は、ホームズがアイリーン・アドラーに恋慕に似た情を感じているわけでは決してなかった。
5全体の骨組みは、動詞wereの前が主語、abhorrentが補語の第二文型です。
that one = that emotion = love です。
cold, precise but admirably balanced がmindを修飾しています。
abhorrentはcausing hatred and disgustぐらいの意味です。
例、Violence is abhorrent to him. 暴力は彼にとって忌まわしいものだ(彼は暴力が大嫌いだ)。
文全体の直訳、あらゆる感情、とくに愛情などはホームズの冷静で精緻ながら見事なまでに整然とした頭脳にとっては忌まわしいものであった。
では1~5をまとめて処理します。
まずは直訳
シャーロック・ホームズにとって、彼女は常に「あの女性」だ。ほかの言い方で呼んでいるのをほとんど聞いたことがない。
ホームズの目には、どんな女もあの女性と比べると見劣りし、どの女よりも優れてみえる。とはいえ、ホームズがアイリーン・アドラーに恋愛感情に似た気持ちを抱いているわけでは決してなかった。あらゆる感情、とりわけ恋慕の情などホームズの冷静かつ精密にして見事なまでに安定した頭脳にとって忌まわしいものであった。
意訳
ホームズは常に彼女を「最高の女性」とみなしていた。ほかの表現がかれの口からでるのをほとんど知らない。彼女の前ではどんな女もかすんで見える、と彼は言う。ホームズには、世界のどの女よりも際立って映るのである。とはいえ、彼はその女性、アイリーン・アドラーに恋愛感情らしきものは一切抱いていなかった。沈着冷静で精巧かつ整合的な思考力を持つホームズには、あらゆる感情、とくに愛とか好意とかは唾棄すべきものであった。
ぶっちゃけ訳(正確さは保証しません、あしからず)
ホームズはあの女性のことをいつも、「あいつは大した女だよ」と言っている。そういう言い方以外はほとんど聞かないなあ。ホームズが言うには、「あの女は光り輝いているよ。ほかの女は影が薄いな。オーラがあるというか、まあ世界一かな。」じゃあ、その女性、アイリーン・アドラーにホームズが少しは惚れているかというと、全然そんなことはなかった。機械のように正確無比で冷静で理性的な頭脳の持ち主。そんなホームズは世間一般の感情、とくに愛とか恋とかを毛嫌いしていたからね。