いや~、凄いですね。
仏教に「マイ」を付けるなんて、それこそお釈迦様でも夢にも思わなかったでしょう。
著者である、みうらじゅんは、ご存じ、造語の達人。
「マイブーム」という言葉の生みの親で、この言葉は1997年の新語・流行語大賞で表彰された後も廃れることなく、2008年に発売された『広辞苑第六版』にも収録されています。
皆さんご存じの「ゆるキャラ」という言葉も彼の造語です。
言葉のセンス、言葉遊びの感性が凄いんですよね。
本書のまえがきで、いきなり「人生で大切なことはすべて仏教が教えてくれた」ですよ。
これって、多分、「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の、、、、、」からのもじりでしょ?
第六章のタイトルは、「いつも心に「マイ仏教」を」ですよ。
当然、「いつも心に太陽を」からでしょ。
さて、みうらじゅん氏の仏教遍歴を本書から簡単に紹介します。
*小学校四年生の時に、「仏像ブーム」が始まる。
⇒祖父と頻繁に様々なお寺に足を運ぶ。祖父宅の仏像の写真集を愛読する。
⇒父からは、誕生日に仏像の写真集がプレゼントされる。
⇒訪れた寺院で自ら写真を撮り、「仏像スクラップ」を作成する。
*仏教系の中高一貫校に入学する。
⇒中二の時、ジョン・レノンの『イマジン』にインスパイアされ、将来、自分の寺に「イマ寺院」と名付ける決心をする。
⇒中三の時、モテたいという邪念?から吉田拓郎に憧れ、作詞作曲を始める。高校卒業までに作った曲は、なんと400曲。
⇒『イマジン』は般若心教に影響されていると直感する。
⇒高校時代は、拓郎とボブ・ディランへの憧憬が爆発し、仏教への情熱が薄れていく。
*武蔵野美術大学に進学し、仏教の世界と離れてしまう。
⇒雑誌『ガロ』で漫画デビューをする。
*卒業後、漫画、イラスト、広告等の仕事につく。
⇒音楽熱が再燃、イカ天出演、CD発表、全国ライブを行う等、ロック魂全開。
*いとうせいこう氏との出会いで仏像への情熱がよみがえる。
⇒1992年、いとう氏と「大日本仏像連合」を結成、各地のお寺を回り「見仏」を行う。
⇒見仏の成果として、1993年に『見仏記』を出版する。
⇒「大仏連バンド」を結成、代表曲は『君は千手観音』。
とまあ、こんな感じです。
とにかく、好きを貫く力が凄いというか、情熱の赴くままに精力的な活動を行います。
全編、面白エピソード、爆笑ネタで溢れています。
ネタバレは避けたいと思いつつも、仏教系学校時代の逸話をひとつここで紹介。
引用します。
「法然上人が愛されていることは、教室の黒板の上に法然上人の絵がかかっていることからもうかがえます。ホームルーム委員を決めるときの選挙でも、結果は「法然上人、法然上人、日蓮上人、法然上人、、、、、、」と、法然上人がクラスの人間を差し置いて、圧倒的な勝利を収めるほどでした。」
いろんなネタで読者を笑わせながらも、仏教に関する項目ではいたって真面目。
仏教の教えの基本である「四法印」の紹介では、『岩波仏教辞典』から、諸行無常、諸法無我、一切皆苦、涅槃寂静を引用・紹介しています。
地獄に言及する際には、『往生要集』や、『正法念処経』をきちんと読みこんだうえで様々な地獄の様相を説明していきます。
その態度は誠実で、真摯なものです。
お釈迦さまの教え自体は、哲学や考え方として受容できるが、「信心=団体行動」のイメージをつい持ってしまい、教団としての仏教には尻込みしてしまう、と本音も語ります。
何事に関しても、きちんと自分の感じ方、考えを正直に伝えようとする態度が本書には流れています。
仏教の教えについて説明したり、自分の体験談(面白ネタ満載)を語りながら、本書は進んでいきます。
「ツッコミ如来」
「後ろメタファー」
「自分なくし」
「人間けだもの」
「フグ・カニ・スッポン」
などなど、書き出せばきりがないほど、みうらワード・みうらワールドが随所で炸裂!
楽しみながら、仏教の基本的な教えについて理解が深まる、そんな一冊と言えます。
『マイ仏教』、お勧めです。
ぜひ、ご一読を。