ダニー・ネフセタイさんという木製家具作家がいる。
日本在住のユダヤ人で、元イスラエル空軍兵だという。
非戦をテーマに著書も出し、日本各地で講演会も行っているようだ。
日本人が非戦論を唱えるよりも、かなり一般受けするのではないだろうか。
ユダヤ人でありながら、恩讐を超えて今ではドイツ(厳密にはナチス)を恨んではいないそうだ。
横浜の中学校で講演した後、一年生の男子から「今でもドイツ人を恨んでいますか」と質問を受けた。
ネフセタイ氏(以下、敬称略)はこう答えたらしい。
「ホロコーストはどの戦争でも、どの国でも起こるかもしれないと分かったから、恨んでもしょうがない。恨み続けるのもつらいでしょ。それに、恨み続けたら次の戦争につながるし、、、」
引用したネフセタイの発言中の「ホロコースト」という語は、近頃よく耳にする。
イスラエル・ハマス戦争に関して、「ガザ地区で現在、ホロコーストが行われている」との発言が各所から出されている。
この文脈での「ホロコースト」使用の是非は、当記事では判断するつもりはない。
こちらが気になるのは、ネフセタイの意見の核心が、今はなき日本社会党の十八番であった「非武装中立論」であること。
彼の考えを著書『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』から以下に引用する。
「日本はどうでしょう。平和憲法のもと、憲法9条のもと、2023年まで戦後78年間も戦争はなかったではありませんか。歴史が証明しています。答えは出ているのです。憲法9条の理想を実現させましょう。(中略)武器は捨てるしかありません。日米安全保障条約に基づく日米軍事同盟はやめるしかありません。『非武装中立』こそ、憲法の精神です」
上のネフセタイの発言を読めばすぐにわかるように、旧社会党や現代の護憲左翼の理屈とまったく同じである。
だから、いわゆる左派の人たちの間では評判がよろしいようだ。
反論したいことは山ほどあるが、一点だけに絞ろう。
ネフセタイや日本の左翼たちを当ブログが「お花畑」と呼ぶ最大の理由は、「因果関係」の取り違えにある。
日本が大東亜戦後、約80年間、戦争をしていないのは憲法9条のおかげではない。
9条があるから戦争が起きなかったのではない!
繰り返す、「憲法9条」と「戦後の平和」に因果関係はない!
言うまでもなく、国家間の戦争とは当事国の政治の延長である。
現在の日本の平和の原因は、戦後数十年間に日本に対して「戦争という政策」を選ぶ国が無かっただけのことである。
仮に、ある国が日本を「武力侵攻」すると政策決定した場合、日本の憲法9条の存在など全く抑止力にならない。
これから軍事攻撃しようとする相手に対して、「あ、あの国は平和憲法があるから、攻めるのはやめよう」などと考えるお人よしというか、甘ちゃん国家があるわけがない。
本当は、ネフセタイや日本の左翼もこの程度のことは百も承知であろう。
わかっていて、憲法9条護持、武器の廃棄、日米安保の解消を狙っているのである。
当ブログの賢明なる常連諸氏にはこれ以上書かなくても、わかり過ぎるほどわかっていることだろう。
以下は、蛇足だと認めたうえで、、、
日本が憲法9条を金科玉条のごとく後生大事に守って得をするのはどの国々だろうか?
日本が武器を廃棄したら、大喜びするのはどんな連中だろうか?
日米安保が解消したら、堂々と軍事行動を起こせるのは誰たちなのか?
ちょっと想像力を働かせるだけでも、妥当な答えが出てくるはずだ。
先ほど言及した本の中に、「全ての暴力に反対します」というプラカードを掲げて日本の道路わきに立つネフセタイ夫妻の写真が掲載されている。
素晴らしい理想と志だと思う。
ぜひ、現在、戦争中のガザ地区やイスラエルでやってほしい。
それほど、戦争反対なら、自分の母国の戦争を止めに行ったらどうなのか。
当ブログは戦争を美化も肯定もしていない。
ただ、厳然とした歴史事実として人類の歴史は戦争の歴史であるという認識に立っているだけだ。
何度も書いたが、我が祖父は大東亜戦争に従軍して生還した。
祖父自身も大東亜戦争を賛美も否定もしていなかった。
ただ、大きな歴史の流れの中で、必死に生き抜いたのである。
この平和な日本で、どんな高邁な理想を語ろうが自由だが、ネフセタイと左翼に言いたい。
非武装中立で平和を達成した国など歴史上存在しない!
追記
ユダヤ人で元イスラエル軍兵士で非戦論者という肩書(?)は、日本ではたいそうウケるのであろう。
執筆活動や講演会などで活躍しているようだ。