日本語には、「蛇に睨まれた蛙」という表現があります。
体がすくんで動くことができない状態、恐怖で立ちすくむ状況などを喩えた言い回しですね。
「蛇に見込まれた蛙」などとも言うそうです。
元々は、野生のヘビが獲物の蛙に狙いをつけている場面に遭遇した人が、「あれ、蛙は動かないな~。恐怖で身が固まってしまったのかな~」と感じたことから生まれた慣用句なのでしょう。
今回は、蛇と対峙している蛙が動かない理由を説明する説を三つばかり紹介します。
箇条書きすると、
*この表現通りに、蛙は恐怖のあまり身体がすくんでしまって動けない状態にある。
*ヤマカガシの幻覚毒によって、蛙は呪縛された状態にある。
*実は、極度の恐怖のせいで動けないのではなく、あえて先に動かないことで生き残る確率を高めている。
第一の説は、それこそ、文字通り、ヘビを前にしたカエルが恐怖を感じるあまりに動くことができない、というもの。
ヘビとカエルがじっと対面している場面を目撃した人間の第一印象でしょう。
カエルの気持ちを確認する術がないため、真偽の判断はつきかねますが、昔からある一番ポピュラーな説です。
仮説の第二は、ヘビの幻覚毒の影響で、カエルが呪縛されたような状態に陥っているというもの。
ただし、この場合、ヘビはヤマカガシに限ります。
マムシ、シマヘビ、アオダイショウ等は「幻覚毒」を持っていないからです。
しかしながら、これもカエルが本当に幻覚を見ているかどうかは、証明するのが困難だと思うのですが。
さて、三番目は京都大学の研究チームが提唱している最新の説を紹介。
ヘビの前でじっと動かないカエルは、実は生き残りをかけた作戦を実行中だとの結論を同学の研究班が出したのです。
京大研究チームは、シマヘビとトノサマガエルを被験者として実験室内で対面させ、両者の動きを繰り返し観察したとのことです。
また、野外でのヘビとカエルの観察結果も踏まえたうえで、分析を行いました。
以下に、その内容を列挙しましょう。
*カエルが先に飛ぶと、空中では進路を変更できないために、その動きを読んだ蛇に空中で噛みつかれる。
*ヘビが先制攻撃をかける場合、折り曲げた体を一気に伸ばすため、急に方向転換ができず、カエルによけられやすい。
一度、ヘビが狙いを外すと、0.4秒ぐらいは動きが止まるので、その間にカエルは水場などに逃げこむことができる。
⇒つまり、カエルはあえてヘビに先手を取らせることで、捕食されるリスクを低くしていると言える。
上記の分析結果は、二者の距離がある程度離れている状況で起こりやすいそうです。
至近距離(5~10センチ)で、両者が対峙した場合、カエルもヘビも先に仕掛ける動きをとるとのこと。
つまり、ヘビはすぐに飛びかかろうとするし、一方のカエルは一目散に逃げだすわけです。
ヘビは狩りの成功を目指して、対するカエルはサバイバルのために、戦略を使い分けているようだ、と京都大学の研究班は考えています。
研究チームの代表を務めた西海望氏(研究当時、京都大学理学研究科博士課程)はこう語っています。
「『ヘビににらまれたカエル』は恐怖で動けない例えではなく、危機を切り抜ける瞬間を虎視眈々と狙う状態の例えとして使う方が、生物学的には正しいかもしれない」
さて、以上のように、三つの説を簡単に見てきましたが、皆さんはどのように感じましたか?
個人的には、第二の仮説(=幻覚毒による酩酊状態)に一番の魅力を感じております。
ただ、ヤマカガシにしか当てはまりませんからね~。
本当のところは、ヘビとカエルに聞かないとわかりませんよ、、、って知らんけど。
ハハハ!