昔の知識人はけっこう言いたい放題です。
今回の英文の執筆者は、Richard Livingstone(1880~1944)というお方。
まず、この識者はこう語ります(ここは訳文のみ)
「民主主義は最高の政治形態であるが、文化面では深刻な弱点にさらされている。一般大衆が権力を掌握すると、当然のように、その国の文化は、大衆の利益や嗜好によって形成されるようになる」
そして、その先を以下のように続けていきます、
They will expect, and plenty of people will be ready to supply, the kind of music and art and radio and films and reading which is to their taste, and there is at least a risk that standards will quickly decline to the second- and third-rate.
⇒大衆は音楽も芸術もラジオ番組も映画も出版物もすべて自分たちの好みに合うかたちを求めるし、製作する側の多くもその嗜好に見合ったものを進んで販売・提供する。そうなると、確実に言えるのは、様々な分野の水準がたちまち二流、三流に落ちていく危険があるということだ。(⇐少々意訳ぎみの拙訳です)
では、上の英文を見ていきますが、and plenty of people will be ready to supply の部分は一種の挿入ですから、後から見ます。
They will expect the kind of music and art and radio and films and reading which is to their taste の部分は、
They = S
expect = V
the kind of music ………….and reading = O で第三文型
of以下には五つの名詞が列挙されています。
which is to their taste のwhichは関係代名詞で、ここは後ろからthe kind of music ~ readingまでを修飾しています。
では、ここまでの訳を考えます。
⇒大衆は、自分たちの嗜好に合った音楽や芸術やラジオや映画や読み物を要求する。
ここに、and plenty of people will be ready to supply をかませていきます。
plenty of people = S
beをVとすると、 be ready toが活きませんので、 be ready to supply全体を Vと見なします。すると、
前文のthe kind of music ~ readingがOであることに気づきます。
ここを訳すと、
⇒そして多くの人々が大衆の嗜好に合った音楽や芸術やラジオや映画や読み物を進んで供給する。
*あとから、この訳を先に訳した部分と合わせて全体の訳づくりをします。
では、後半部分を見ていきましょう。
and there is at least a risk that standards will quickly decline to the second- and third-rate.
is = V
a risk = S ここは、例のthere + be構文です。
that = 同格のthatで、a riskと同格です。
standards = S
decline = V
では、ここを訳します。
⇒すると、少なくとも、文化の水準がすぐに二流、三流に下がってしまう危険がある。
最後に、全体をまとめて訳します。
⇒大衆は自分たちの嗜好にそう音楽や芸術やラジオ番組や映画や読み物を求めるようになるし、多くの人々が、それに見合った内容を進んで提供する。そうなれば、少なくとも、文化の水準がすぐに二流、三流に低下する危険がある。
*蛇足
最初に挙げた「少々意訳気味の拙訳」は以下の点を考えて、あのような訳にしています。
・musicやartや radioなどが、すべてandでつながる列挙になっていること
・plenty of peopleを少し説明的に訳したみた
・at leastのニュアンスをやや大げさに訳してみた
・standardsの複数のニュアンスを出してみた