「中央アジア+日本」対話って何ですか? ~ 日本の外交政策に期待する!

最近、公開した「ウズベキスタンのナヴォイ劇場」の記事で、名前だけ紹介した「中央アジア+日本」対話。
今回は、この対話の枠組みについて簡単に触れたいと思う。

まず、この「中央アジア」とは、中央アジアの五か国のこと。
具体的には、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン。
これら五か国は、ロシア、中国、イラン及びアフガニスタンに囲まれた、ユーラシア大陸の中央に位置している。

ソ連の崩壊が1991年。
日本は、翌年の1992年に中央アジア五か国と外交関係を樹立した。
なんか、日本も結構、動きが素早いな、ハハハ。

近年、日本だけではなく、米、ロ、中国、EU、インド、韓国なども中央アジアとの協議の枠組みをそれぞれ設けている。
その理由は、様々だが、何点か以下に見ていこう。

◎ エネルギー安全保障

日本のように、資源やエネルギーのほとんどを輸入に依存している国にとっては、中央アジアとの資源外交は「エネルギー安全保障」の観点から極めて重要。
中央アジア各国の資源を以下に簡単に紹介する。

*ウズベキスタン
エネルギー⇒原油、ウラン、天然ガス
レアメタル⇒モリブデン、タングステン
金属⇒金、銅

*カザフスタン
エネルギー⇒原油、ウラン、天然ガス
レアメタル⇒クロム、モリブデン、タングステン

*キルギス
レアメタル⇒アンチモン、タングステン
金属⇒金

*タジキスタン
レアメタル⇒アンチモン、タングステン
金属⇒金

*トルクメニスタン
エネルギー⇒原油、天然ガス

◎ ヨーロッパとアジアをつなぐ交易路としての重要性

カスピ海周辺地域から、欧州やロシア、中国に向けてパイプラインが設置されいるため、中央アジアはエネルギー輸送の面から重要。

また、ウクライナ・ロシア戦争によって、ロシア経由の物流ルートの利用が厳しい状況であるのが現状。
そこで、中央アジアは欧州とアジアを結ぶカスピ海ルートとして注目を集めている。
このカスピ海ルート開発は、グローバルサプライチェーンを強化して、中央アジアの経済発展にも繋がるとのこと。

では、日本と五か国の対話の内容について少し、触れてみたい。

2004年、日本は中央アジア諸国との間に「中央アジア+日本」対話を立ち上げた。
これまでに何度も外相会合を行い、友好関係を構築し、互恵的協力を深めている。

例えば、ソ連崩壊後に雇用が悪化したキルギスに、日本は大分県の成功例『一村一品』プロジェクトを紹介した。
その結果、キルギスの羊毛やはちみつ、果実類を活用したブランド商品の開発に成功。
最初は、小さな取り組みだったものが、現在ではキルギス各地に広がり、全国の地場産業活性化に繋がった。

1999年度には、「人材育成奨学計画」を策定。
中央アジアの若手行政官が日本に留学して、日本で得た知見を帰国後に自国に還元している。
これまでに、五か国から700人を超える留学生が日本を訪れている。
元留学生が、帰国後にそれぞれの国で指導的地位に就いている例もあるようだ。

さらに日本は、ウズベキスタンやキルギスやカザフスタンにおける民間企業の人材育成を支援している。
これらの国で、日本人材開発センターを通じ、現地のビジネス人材養成に日本が力を貸している。

最後に、一つ深刻な話。
中央アジアは、アフガニスタンから違法薬物、密輸品、テロリストなどが流入するという大きな問題を抱えている。
これを背景に、2019年度に「中央アジアにおける国境連絡事務所及び省庁間の機動的チームの能力強化による域内越境協力強化計画(⇐長いよ~!)」を策定。

この計画の下で、機材供与や関係機関職員の研修等を行い、省庁間チームの能力向上や連絡事務所の機能強化を図っている。

この中央アジアは、古来よりシルクロードの中心地として大いに栄えた地域である。
様々な民族が行き来したために、イスラム文化や遊牧文化などが混ざり合う、独自の文化が生まれた。

一方、位置的にはアジアと欧州、ロシアと中東を結ぶ十字路にあたるため、この地区の情勢はユーラシア大陸全体の安全保障に大きな影響を与える。
そのことを見据えた上で、日本政府にはこの地域と協力・連携を図りながら、日本の国益に沿った外交政策を継続していただきたい。

なんだかんだで、期待してますよ。
政府、外務省の皆さん。